2013 Fiscal Year Research-status Report
可逆論理回路合成のための新しい論理式のクラスとその最小化アルゴリズム
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24500053
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
平山 貴司 岩手大学, 工学部, 講師 (30316509)
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Keywords | 可逆論理回路 / AND-EXOR論理式 |
Research Abstract |
量子コンピュータは、理論上任意の並列度で計算を行うことが可能なコンピュータであり、現在のディジタルコンピュータの延長とは本質的に異なる高い計算能力を持つ。しかしながら、量子コンピュータは、現在、基礎研究の段階であり、実現されていない。量子コンピュータの世界初の実現に向けて、国内国外を問わず、多数の研究機関が量子回路の研究でしのぎを削っている。量子回路の論理合成レベルの基本モデルは可逆論理回路であり、NOTゲート, CNOTゲート, Toffoliゲートなどの量子論理ゲートを組み合わせて構成される。効率の良い量子回路を実現するためには、なるべく量子論理ゲートの段数が少ない可逆論理回路を論理合成することが望ましい。これらのゲートの論理動作はAND演算とEXOR演算である。このため、可逆論理回路の合成を目指して、AND-EXOR論理式の積項の性質に着目した。 前年度に行われた基礎理論やアルゴリズムの検討に基づいて、該当年度は、AND-EXOR論理式と可逆論理回路との対応について理論とアルゴリズムを発展させた。開発したアルゴリズムをLISP等のプログラミング言語で実現し、パソコンを用いて、アルゴリズムの効率を調べる実験を行った。特に、AND-EXOR論理式の積項数から可逆論理回路のゲート数を見積もるアルゴリズムを用いて、具体的な実用関数(ベンチマーク)の可逆論理回路の最適解の計算に挑戦した。その結果、規模の小さい回路については、最適性を保証することができることが確認された。最小性が保証されない場合にも、可逆論理回路のゲート数の下界を得ることができた。これは、他の手法にはない特徴である。本成果は2013年5月に開催された国際会議にて発表した。また、関連成果を国内の学会にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AND-EXOR論理式の積項の性質を利用して可逆論理回路の合成を行うことを目指して、積項と可逆論理回路との対応について理論構築し、アルゴリズムの実験を行ってきた。 該当年度は、AND-EXOR論理式と可逆論理回路との対応について理論とアルゴリズムを発展させた。これにより、具体的な実用関数(ベンチマーク)の可逆論理回路について、実験をすることができた。その結果、規模の小さい回路については、最適性を保証することができることが確認された。最小性が保証されない場合にも、可逆論理回路のゲート数の下界が得られたことが確認された。下界は、最小化アルゴリズムの計算の効率化に応用できる知見である。これらの成果より、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、AND-EXOR論理式のアルゴリズムを足掛かりとして、可逆論理回路の最小化について理論構築、アルゴリズム開発、実験を行なってきた。その結果、規模の小さい回路については、最適性を保証することができることが確認された。しかし、回路の規模が大きくなるほど、最適解からかけ離れた結果となり、また計算時間も膨大となることが示された。これらの弱点について、さらなる検討を行う。 解の精度を上げるための方策としては、関数の性質についてより詳しく検討する。特に部分関数のAND-EXOR論理式については改善の余地があると考えている。計算の高速化のための方策としては、実験データを調べて、解の探索順序、解を見つけるためのヒューリスティック、および探索空間の制限などについて検討する。これらの改良により、アルゴリズムをより実用的なものに近づけることを目指す。 さらに,これまでに開発されたアルゴリズムや実験結果をまとめ,学術論文誌に成果を投稿する。
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