2012 Fiscal Year Research-status Report
クラウドコンピューティング環境に対する動的信頼性評価に関する総合的研究
Project/Area Number |
24500066
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
田村 慶信 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (20368608)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | クラウドコンピューティング / オープンソースソフトウェア / 信頼性 / ディペンダビリティ |
Research Abstract |
近年,データの一元管理,低コスト,保守・運用が容易といった観点から,OpenStackやEucalyptusなどのオープンソースソフトウェアを利用したクラウド環境の構築に注目が集まっている.しかしながら,ソフトウェアの設計図にあたるソースコードが世界中に公開されているため,最近の大規模クラウドシステムにおける情報事故のように,悪意のあるサイト攻撃や情報流出の標的になり易く,なかなか導入に踏み切れないのが現状である.特に,大規模システムにおいては,ひとたび障害が発生すると個人情報の漏洩だけではなく多大な財産の損失を招くものが多く,大容量データ通信端末が普及する前に,クラウド環境に対するセキュリティ・信頼性評価に関する技術を確立することは非常に重要となる.本年度は,クラウド環境をクラウド基盤システムとそれにアクセスする端末の集合体から構成されるものと捉え,クラウド基盤システムの信頼性評価法として,確率微分方程式モデルを提案した.さらに,提案モデルを応用した新たな信頼性評価のための数理モデルとして,ジャンプ拡散モデルを提案した.同時に,クラウド環境へアクセスする端末に対する信頼性評価のためにハザードレートモデルを提案してきた.また,オープンソースソフトウェアのクラウド基盤ソフトウェアとして知られるOpenStackや,オープンソースソフトウェアの代表的な組込みOSとして知られるAndroidにおけるバグトラッキングシステム上から実験データを収集するとともに,これらのデータを適用した具体的な信頼性評価例を示した.提案手法の妥当性を検証した論文を公開するとともに,信頼性およびソフトウェア工学分野に関係する国内外の関連学会において研究成果を広く公表してきた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
クラウドコンピューティングに対する信頼性評価モデルの妥当性検証を行うとともに,実際のデータに基づくモデルの性能評価を行ってきたが,当初計画よりも前倒しで研究開発が進んでおり,研究成果にも進展があったため,平成25年度に発表予定であったクラウドコンピューティングに対するディペンダビリティ分析に関する研究成果を,平成24年度中に公表することとした.特に,情報分野はドッグイヤーと呼ばれるほど技術革新のスピードが極めて速い.こうした分野において,研究成果を迅速かつ効率的にアウトプットすることは非常に重要であると考える.さらに,情報分野では研究成果の迅速なアウトプットが求められる分野でもあり,ジャーナル誌へ投稿した場合は投稿から採録までに少なくとも1年間は必要とされている.一方,国際会議論文として研究成果を公表する場合は,半年という短い期間で成果をアウトプットすることが可能となる.こうした情報分野特有の技術的および学術的背景のため,国内外において積極的に研究成果を公表することにより,当初計画以上に研究開発が進展した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度においては,クラウド基盤システムとそれにアクセスする端末間のトラフィック状況からレスポンス遅延などに関する影響を考慮し,ジャンプ拡散過程に基づく確率微分方程式に含まれるジャンプ項に対するパラメータ推定に応用する.これにより,クラウド基盤システムとそれにアクセスする端末の信頼性だけではなく,その間の通信データに依存したクラウド環境全体の信頼性評価が可能となる.また,システム全体の信頼性評価尺度として,レスポンス遅延に関する閾値を考慮した信頼度,端末数の閾値を考慮した信頼度,クラウドシステム全体の稼働率などの評価尺度を導出する.さらに,実際のトラフィックデータを想定した実験結果をまとめることにより,セキュリティ,信頼性,およびソフトウェア工学分野に関係する国内外の関連学会において研究成果を公表する.さらに,平成26年度における実施計画として,これまでの研究成果をクラウド基盤システムに対する信頼性評価ツールとして実装し,世界中に公開する.ツールの実装に適用するモデルは,ジャンプ拡散過程に基づく確率微分方程式モデルとし,パラメータ推定の際には累積フォールト発見数およびクラウドコンピューティング環境特有のデータを利用する.ツールの実装には,Flex言語を利用し,AIRアプリケーションとして実装する.高品質な信頼性評価ツール開発を目指し,ソースコードを再利用するとともにテスト工程を導入する.また,ツールの実利用上における機能・性能を検証する.さらに,提案されたツールに関する内容をまとめるとともに,クラウド,セキュリティ,信頼性に関係する国内外の関連学会に研究論文を投稿することにより,研究成果を広く公表する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度においては,クラウドコンピューティングに対する信頼性評価のための数理モデルの提案し,実際のデータに対する性能評価結果をまとめて,国内外の研究会および国際会議において研究成果を公表してきた.平成25年度においては,クラウドシステムと端末間のトラフィック遅延や,クラウドシステムに接続する端末数を考慮したモデルの性能評価を中心に研究を行っていく予定である.したがって,モデルの実利用上における性能評価成果に関する研究成果として,今年度も積極的に国内外における関連学会において研究発表を行っていく予定である.このため,研究成果公表のための旅費として全体の約80%を想定している.また,昨年度から蓄積された研究成果を査読付き論文として積極的に投稿を行うことから,論文投稿料や国際会議参加経費等の経費として全体の約20%を予定している.
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Research Products
(24 results)