2013 Fiscal Year Research-status Report
クラウドコンピューティング環境に対する動的信頼性評価に関する総合的研究
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24500066
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
田村 慶信 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (20368608)
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Keywords | クラウドコンピューティング / オープンソースソフトウェア / 信頼性 / ディペンダビリティ |
Research Abstract |
クラウドコンピューティングの信頼性を総合的に評価するために,クラウド環境がクラウド基盤システムとそれにアクセスする端末の集合体から構成されるものと捉え,クラウド基盤システムとそれにアクセスする端末間の通信データをノイズとして表現した新たな信頼性評価法を提案した.特に,クラウド基盤システムとそれにアクセスする端末間のネットワークトラフィックを考慮した確率微分方程式モデルを構築し,実際のデータに対する種々の信頼性評価尺度を導出してきた.また,クラウドコンピューティング全体の稼働率に関する評価尺度を与えるとともに,コスト評価基準に基づく最適メンテナンス時期の推定法を提案した.本提案モデルを利用することにより,クラウドコンピューティングの運用段階に対して,より現実的なディペンダビリティ評価法として利用できるものと考える.さらに,提案されたクラウドコンピューティングに対する確率微分方程式モデルに基づく信頼性評価法を,確率論や数理モデルに関する知識が無くとも容易に利用できるように,Flex言語を用いたアプリケーションソフトウェアとして実装した.また,近年,低コスト・短納期・標準化といった観点から,組込みオープンソースソフトウェアが積極的に採用されている.本研究課題では,こうしたモバイルソフトウェアを対象としたインストーラの振る舞いを考慮したハザードレートモデルに基づく信頼性評価法を提案した.さらに,提案モデルに基づく信頼性評価ツールをアプリケーションソフトウェアとして開発し,実際のソフトウェア故障発生時間間隔データに対する信頼性評価例を示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画よりも進展があったため,平成26年度に発表予定であったクラウドコンピューティングに対するネットワークトラフィックを考慮したディペンダビリティ分析に関する研究成果を,平成25年度中に公表した.例えば,一般的なジャーナルへ投稿した場合は投稿から採録までに少なくとも1年間は必要とされているが,国際会議論文として研究成果を公表する場合は,約半年という短い期間で研究成果を国内外へ公表することが可能となる.特に,情報分野は技術革新のスピードが極めて速く,研究成果を迅速かつ効率的に公開することは非常に重要となる.こうした情報分野特有の技術的および学術的背景から,積極的に研究成果を国内外へ公開し,信頼性評価のためのソフトウェアアプリケーション開発も順調に進んだため,当初の計画以上に研究が進展した.クラウドコンピューティングに対する信頼性評価法だけではなく,信頼性評価のためのソフトウェアアプリケーション開発が順調に進展したことは非常に大きな成果であり,今後の研究計画にも余裕ができ,アプリケーションソフトウェアの機能拡充や品質向上にもつながった.また,当初の計画以上に研究が進展したことにより,研究のさらなる発展を目指し,クラウドサービスの運用段階を対象とし,ネットワークトラフィックの変化率を考慮した信頼性評価のためのジャンプ拡散モデルを構築してきた.さらに,クラウドコンピューティングの特徴を考慮したジャンプ拡散モデルに基づく総ソフトウェアコストを定式化し,ネットワークトラフィックの変化を考慮した最適メンテナンス時刻の推定法を提案することにもつながった.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度までは当初の計画以上に研究が進展したため,信頼性評価のためのソフトウェアアプリケーションの開発時間に余裕ができた.このことから,信頼性評価のためのアプリケーションソフトウェアのテストや機能拡張を行う予定である.これにより,高品質かつ高機能なディペンダビリティ評価ツールの開発に結びつくことから,より充実した研究目的の達成を目指す.特に,ネットワークトラフィックだけではなく,近年注目されているビッグデータの特徴をも包括することにより,クラウドコンピューティングとビッグデータを融合した新たな信頼性評価法の開発に結びつけたい.平成26年度における実施計画として,これまでの研究成果をクラウド基盤システムに対する信頼性評価ツールとして機能拡張することにより追加実装し,Webを通して世界中に公開する.特に,クラウド基盤システムへアクセスする端末等の影響を考慮するためにネットワークトラフィックおよびビッグデータを考慮した動的信頼性評価機能を組み込む.ツールの機能としては,確率微分方程式モデルまたはハザードレートモデルを適用する.ツールの実装には,Flex言語を利用し,AIRアプリケーションとして実装する.本ツールにより,クラウド基盤システムとそれにアクセスするモバイル端末の両側面を考慮したクラウド環境全体に対する信頼性評価が可能となるものと考える.さらに,提案されたツールに関する内容をまとめるとともに,クラウド,セキュリティ,信頼性に関係する国内外の関連学会に研究論文を投稿することにより,研究成果を広く公表する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画以上に研究が進展したことにより,国際会議参加費や論文誌掲載料等の必要性が生じた.このため,平成25年度内に200,000円の前倒し請求を行った.しかしながら,国際会議参加費には参加登録料だけではなく旅費も含まれている.特に,海外で開催される国際会議への参加に伴う航空運賃は,場所や渡航時期に左右され易い.前倒し請求により参加した国際会議には,当初計画よりも航空運賃を低く抑えて参加することができたため,前倒し請求金額に残額が生じた. 平成25年度において生じた未使用額については,本来は平成26年度利用予定であったことから,従来通りの使途および計画の下で使用する.特に,国際会議参加のための旅費として生じた未使用額であることから,平成26年度に計画されている国際会議参加費のうちの旅費の一部として未使用額を利用する計画である.
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