2013 Fiscal Year Research-status Report
無線機器の省電力機構の効果を最大化するトランスポート層アーキテクチャ
Project/Area Number |
24500078
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
長谷川 剛 大阪大学, サイバーメディアセンター, 准教授 (00294009)
|
Keywords | TCP / 無線LAN / 消費電力 / 輻輳制御 / SCTP / MACプロトコル |
Research Abstract |
IEEE 802.11 無線LAN においては、無線通信が消費する電力が全体の10%から50%を占めることが報告されており、無線通信の消費電力を削減することが機器全体の消費電力を削減するうえで重要である。無線LAN における省電力化に関する検討は、主にハードウェアレベルおよびMAC プロトコルレベルの双方から行われている。一般に、ネットワーク機器の省電力に関して議論を行う場合においては、省電力効果とネットワーク性能間のトレードオフを考慮する必要がある。すなわち、消費電力の削減に効果のある要因を明らかにし、その要因がどの程度ネットワーク性能を低下させるかを知ることが重要である。しかし、TCPなどのトランスポート層プロトコルの挙動が省電力性能に与える影響を考慮したデータ転送手法に関する研究はほとんど行われていない。 そこで本研究では、無線LAN 環境におけるTCPデータ転送の省電力化を行うためにSCTP トンネリングを提案した。SCTP トンネリングは、複数のTCP フローを無線端末とアクセスポイント間に確立した1 本のSCTP アソシエーションに集約する。そして、SCTPトンネリングは集約されたTCP フローのパケットをバースト的に転送することによって状態遷移回数を削減し、スリープによる省電力効果を高める。また、提案方式の省電力効果を評価するために、SCTP トンネリングの消費電力モデルを構築する。その消費電力モデルに基づいた消費電力解析により、提案方式が消費電力を最大70%程度削減できることを示した。また、実機実験によってもその有効性を検証し、標準化されている省電力手法を単独で用いた場合と同程度の省電力効果を保ちながら、ファイル転送時間を短く抑えることができることを示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、無線アクセスネットワーク環境において、入れ替えるだけで消費電力が従来に比べて最大で50%削減できるトランスポート層プロトコルを提案し、その有効性を実機実験によって確認することを最終的な目的としている。それに対し、平成25年度までの研究で、数学的解析手法による提案手法が持つ消費電力削減効果の見積りと、簡易的な実機実験による評価を行った。そのため、概ね、計画通りに進んでいると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、さらに一般的な無線LAN環境を想定したシミュレーション評価や実機実験によって、提案方式の有効性を検証したい。また、マルチホップ無線環境への応用を視野に入れ、解析検討を進める予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に、他の無線ネットワーク機器を使った実験行うことを予定していたが、実験環境の構成上、購入予定だった無線ネットワーク機器では実験が行えないことが判明したため。 実験が可能となる無線ネットワーク機器を検討・購入し、実験を行う。
|