2013 Fiscal Year Research-status Report
2次元パターン反辞書法に基づく高解像度MPEG圧縮映像に適したシーン検出
Project/Area Number |
24500110
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
森田 啓義 電気通信大学, 大学院情報システム学研究科, 教授 (80166420)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 隆博 長野県工科短期大学校, 電子技術科, 准教授 (60579001)
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Keywords | 反辞書 / 2次元パターン / MPEG2/4 / マクロブロックタイプ / カット点検出 / イベントシーン検出 |
Research Abstract |
1)2次元反辞書を用いた2次元データの復元: 画像や図形など2次元配列として表現される2次元データに対する2次元反辞書とは,その2次元データに出現しない長方形パターン(禁止パターン)の中で,つぎの極小制約を満たす禁止パターンの集合である.極小制約とは,禁止パターンの左端列,右端列,最上行,最下行のうち,どれか一つを取り除いて得られる4つの部分パターンのいずれもが,元のパターンに必ず出現する,という制約である.2次元反辞書は画像などの2次元データのデータ圧縮やパターン検索への応用が期待されている. 今年度は,任意の2次元データに対する2次元反辞書が与えられたら,その情報から元の2次元データが完全に復元できることを明らかにした.この結果は,2次元反辞書を用いた2次元データの圧縮法の復号器を構成するための基本的な成果である. 2)多値系列に対する反辞書木の符号化法の確立: 反辞書そのものの符号化については,入力データが1次元の場合に,前年度,部分文字列数え上げ法(CSE法)を用いる方法を提案したが,入力アルファベットは2値の場合に限られていた.今年度は,多値の場合にも対応できるように,CSE法を拡張し,多値アルファベットの反辞書木の符号化法を提案した.多値化できたことにより,MPEGビデオのP,Bピクチャの符号器情報を表すMBTパターンへの適用が可能になった. 3)シーン解析について:前年度に提案したMBTパターンを用いたカット点検出法をサッカーのゴール付近で起こるイベントシーン検出に適用した.イベントシーン検出のためには,カメラの切り替わりにともなう画像カット点を精度よく求めることが,隣接するカット点間であるショットの特徴量の変動をより正確に判断する上で欠かせない.提案法を用いることにより,イベントシーン検出性能が従来法を上回る,再現率86.2%,適合率90.8%を達成した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1次元反辞書に関して,課題であった反辞書のオンライン生成法を完成させた.動的な接尾辞木生成法として知られる二つの手法,すなわち,入力データ列を先頭から逐次に処理するUkkonenの算法と,逆に末尾から先頭に向かって処理するWeinerの算法を組み合わせることによって,接尾辞木から反辞書木を構成する上で問題であったポインタ処理の問題を解決できた.さらに,反辞書そのものをコンパクトに保存する手法を一般化し,一般の多値データに対応が可能になった. そして,シーン解析については,MPEG圧縮データに含まれる圧縮に用いられた符号器の情報を担うマクロブロックタイプ(MBT)情報を精査し,隣接するフレーム間のMBT情報からカット点を精度よく判定することが可能になり,その結果,サッカー映像のゴールシーンの検出率の向上に大きく役立った. また,2次元反辞書については,反辞書の極小禁止パターンから元の2次元データを復元する手順を明らかにした.しかし,当初の予定に掲げていた2次元反辞書生成法の構築には未だ至っていないこと,そのため,MBT情報の反辞書構築が行えていないなど,研究当初に掲げた計画からやや遅れが生じた. この主な原因は,これまで,2次元の極小禁止パターン(MFP)の定義が一意には定まっておらず,定義の検討に時間がかかったことが挙げられる.ただ,上で述べたように,今回採用したMFPの定義を用いると,元の2次元データを正しく復元することが可能であることが判明したので,この定義を採用して研究を進めていく目処は得られた.
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Strategy for Future Research Activity |
極小禁止パターンの定義の仕方については今年度で一定の結論が得られたので,この定義に基づいて,与えられた2次元データに含まれる極小禁止パターン(MFP)を列挙する算法を構築する.本来の目標としては,与えられた多値の2次元パターンに対して,すべてのMFPが列挙できることが望ましいが,計算量的に困難な場合は,列挙するMFPの大きさに制限を設けるなど条件を緩和することを検討する. 見い出されたMFPを格納するために,4分木などのデータ構造の適用を検討する.4分木は根と呼ばれる一つのノードだけからなる木か,あるいは,根jから出た4本の枝の先に4分木を部分木として持つ木構造として再帰的に定義される.4分木はパターン検索などに広く応用されており,2次元反辞書を表現するのに適している. 一方,ビデオシーン解析においては,着手が予定より遅れている2次元反辞書生成法で求められたMFPと,収集した様々なシーンのMBTパターンとの関係を定量的に解明する.これまでMBTパターンの統計量としては,MBTの取りうる4つの値(圧縮に用いらた符号器情報に対応)の頻度分布のみを用い,頻度分布の変動をもってカット点の検出が行われて来たが,今回は,とくにMBTパターンのMFPに着目することにより,瞬時カット点だけでなく,映像が局所的に変動するディゾルブカット点やテロップの出現において,MFPが変化する挙動を詳しく調べる. 加えて,2次元反辞書を用いるアプローチと平行して,MBTパターンをなんらかの方法で1次元の記号列に変換することによって,すでに完成している1次元データの動的反辞書構築法を適用し,極小禁止語(MFW)の統計量(MFWの長さの頻度など)とサッカーのハイライトシーンの関係を明らかにすることも合わせて行う.
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Research Products
(6 results)