2012 Fiscal Year Research-status Report
原音復元可能な音響電子透かし技術への信号変形耐性付加
Project/Area Number |
24500128
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo University of Information Sciences |
Principal Investigator |
西村 明 東京情報大学, 総合情報学部, 教授 (30286182)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 情報通信工学 / 情報工学 / 画像,文章,音声等認識 / 先端的通信 / 著作権・コンテンツ保護 / 音響信号処理 |
Research Abstract |
原音への完全復元が可能な可逆(リバーシブル)音響電子透かし手法に対して,情報秘匿済み信号への変形耐性を付加することが,本研究の目的である。 24年度の実施計画に挙げた従来手法の改善として,原信号を短い時間区間に分けて埋め込み処理を行い,検出時にはその時間区間を自動的に検出できる仕組みを取り入れ,部分的な改変があっても,それ以外の区間では原信号に復元できる改善を行った。さらに,秘匿データ量を可変として,情報秘匿済み音響信号の音質劣化度合いを制御できるように改善を行った。この成果は,平成24年7月開催のIEEE国際会議IIHMSP2012において発表した。 一方,この手法に対し情報秘匿済み音響信号への変形耐性付加をさらに試みたが,音質を大きく劣化させてしまうことが明らかになり,方針を転換した。 そして,波形を短時間区間毎に分割し,それぞれの区間の平均パワーを量子化して強耐性秘匿情報を埋め込む手法を新たに開発した。この手法は,量子化の際に行う振幅増幅によって生じる整数振幅値の隙間に,可逆秘匿情報を加算することにより,強耐性電子透かしと可逆電子透かしの両方の特徴を同時に満たすことができた。さらに,強耐性音響電子透かし技術の評価基準を用いて耐性および音質の評価を行ったところ,この基準を満たしていることも明らかになった。この成果は,平成25年10月開催のIWDW2013(電子透かしとディジタル法科学に関する国際会議)に投稿準備中である。また,ここで用いた評価基準における信号処理攻撃の根拠に関しては,平成25年6月開催のICA2013(国際音響学会議)において発表予定である。 強耐性電子透かしと可逆電子透かしの両方の特徴を同時に満たす音響電子透かし手法の開発はこれまでに無く,高音質の音楽配信やその著作権管理,メタデータ記録など新しい応用分野を切り開くと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
原音への完全復元が可能な可逆(リバーシブル)音響電子透かし手法を改善し,これに信号変形耐性を付加するという本研究の目的に対して,部分的な改変に対して改変されていない部分の完全復元を可能とする手法を開発し,さらに強耐性電子透かしと可逆電子透かしの両方の特徴を同時に満たす基本手法の開発と評価が達成できた。 また,音響電子透かし技術の評価手法に関しても,攻撃となる信号処理の度合いとその音質劣化の面から検討することで,これまで研究者間で我田引水的に行われてきた評価手法に対しても,一定の根拠を与えることができた。 国際会議および国内研究会へ参加することにより,新しいアイデアの着想を得て,研究目的を達成するための新たな手法の開発に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで開発してきた手法は,強耐性電子透かしと可逆電子透かしの両方の特徴を同時に満たしており,情報秘匿済み信号にMP3などの情報圧縮処理を含む一般的な変形処理が加わった場合に,強耐性秘匿情報の検出は可能であるものの,原信号の音質へ近づける復元処理が困難である。このため,検出した強耐性秘匿情報から,逆処理を行って原信号の音質に近づける処理を実現することが望まれる。これを実現するため,従来の波形領域での手法を改善するとともに,周波数スペクトル領域においても整数MDCTを用いた手法を開発し,これらを評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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