2013 Fiscal Year Research-status Report
原音復元可能な音響電子透かし技術への信号変形耐性付加
Project/Area Number |
24500128
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Research Institution | Tokyo University of Information Sciences |
Principal Investigator |
西村 明 東京情報大学, 総合情報学部, 教授 (30286182)
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Keywords | 音響電子透かし / ステガノグラフィ / 客観音質評価 / 評価基準 / 音響信号処理 / 可逆変換 / 攻撃耐性 |
Research Abstract |
原音への完全復元が可能な可逆音響電子透かし手法に対して,情報秘匿済み信号への変形耐性を付加すること,つまり可逆かつ強耐性電子透かし技術の開発が,本研究の目的である。 本年度は,まず変形への耐性を評価するために,様々な音響信号を対象とした音響電子透かし埋め込み済み信号へどのような信号処理攻撃を実施するのが妥当であるかを,処理後の客観音質評価より検討した。その結果,音響電子透かし技術における耐性評価を行う際に,実施すべき信号処理攻撃が明らかになった。この成果を,平成25年6月開催のICA2013(国際音響学会議)において発表した。 また,24年度に開発した,時間波形上の振幅操作によって実現される可逆かつ強耐性電子透かし技術について,平成25年4月に電子情報通信学会情報ハイディング及びその評価基準委員会において策定された,新しい音響電子透かし技術の評価基準を用いて耐性評価を行った。その結果,一部の試験音源についてはこの基準を満たさないことが分かった。しかし,客観音質評価に関しては基準を満たした。この成果を,平成25年10月開催のIWDW2013(電子透かしとディジタル法科学に関する国際会議)において発表した。 さらに,上述の可逆かつ強耐性電子透かし技術に用いられた新しい可逆情報秘匿の基本手法である一般化拡張法を定式化して,音響信号波形の線形予測誤差差分に適用した論文を,電子情報通信学会英文誌Enriched MultiMedia特集号に投稿した。 この一般化拡張法を,整数MDCT後の周波数領域における帯域毎の振幅変調に適用することで,可逆かつ強耐性である電子透かしの特徴に加えて,情報秘匿済み信号にMP3などの情報圧縮処理を含む一般的な変形処理が加わった場合に,原信号の音質へ近づける復元処理が可能な技術の開発を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
音響電子透かし技術における耐性評価を行う際に,実施すべき信号処理攻撃が明らかにし,その成果を国際会議にて発表できた。これは当初の研究計画にはなかった事項ではあるが,強耐性電子透かしを評価する過程でその必要性が明らかになったものである。 また,情報秘匿済み信号に与えられる部分的な信号処理に基づく攻撃(改変)に対して,改変されていない部分の完全復元を可能とし,かつ改変部分からも秘匿情報の一部が高い確率で検出できる手法を開発および評価し,その成果を国際会議にて発表できた。さらに,この技術で用いられる新しい可逆電子透かし手法である一般化拡張法を定式化した論文を学術誌に投稿できた。 これらの研究内容に対する成果発表は,当初の計画以上に進んでいる。一方で,本年度当初の目標としていた,情報秘匿済み信号に対するMP3符号化などの変形処理を経た信号から,原信号の音質へ近づける復元処理を可能にする手法は,まだ開発途上である。しかし,自身が過去に開発した周波数帯域分割と振幅変調を用いた強耐性音響電子透かし手法を一部取り入れることで,順調に開発は進んでいる。これらを総合すると,おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
可逆かつ強耐性電子透かし技術を用いて情報秘匿を行った信号に対して,MP3符号化などの変形処理が加わった信号から,原信号の音質へ近づける復元処理を可能にする手法を開発する。この手法は,一般化拡張法を整数MDCT後の周波数領域における帯域毎の振幅変調に適用することで実現する。その情報秘匿済み信号に対して変形処理が行なわれた後の耐性(秘匿情報のデータ検出エラー率)について,強耐性電子透かしの評価基準によって評価を行う。また,復元処理後の音質について,客観評価を行う。 さらに,本研究において開発してきた可逆かつ強耐性電子透かし技術には,その応用に適した改良も望まれている。よって,応用として音響信号の改ざん検出あるいはメタデータの情報秘匿による音響信号への価値付加に適した技術の改良を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は,なんらかの用途に使用するためには少額すぎるため,当該年度に使用できなかった。 次年度使用額は,当初平成26年度予算額から前倒し支払請求額を差し引いた予算額に加算することで,当初研究計画に従って使用できる。
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