2012 Fiscal Year Research-status Report
安全配慮姿勢を育み応用力を強化する化学実験支援システムに関する研究
Project/Area Number |
24500142
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
藤波 香織 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10409633)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 拡張現実感 / 安全教育システム / 化学実験 |
Research Abstract |
平成24年度は,1)プロジェクタ投影と対象物の正確な関連づけ方法,2)微小物体のIDと位置特定方法,3)応用力醸成のためのメッセージ内容および提示方法,の初期検討を行った. 1)に関しては,卓上にプロジェクタで危険回避情報を提示する際には,視認性の低下や解釈の齟齬をなくして情報が指す物体を正確に特定させることが必要である.このため,卓上物体の形状や作業者の視点を考慮して陰影領域を避けた情報提示位置の決定方法を考案した.Azumaらが考案したGardient Descent(GD)法を改良し,物体と情報との距離を可変にして確実に重ならない場所を決定することで,情報と物体の特定正解率および特定時間のいずれにおいてもGD法より良い結果を得た. 2)に関しては,これまで4センチ四方の視覚マーカーを物体のID特定に利用していたが,実験時に邪魔になり却って作業者を危険にさらすことに繋がりかねない.ID認識にはこれまで卓上に設置したカメラを用いていたが,手首に装着したカメラと手首位置を認識する卓上カメラを組み合わせることで,8mm四方の微小マーカーの3次元座標を95%の確度で52mm以内の誤差で認識することが可能となった. 3)に関してはこれまでの研究を通じて,警告メッセージに複数の解釈を持たせる「多義性」の活用により学習効果が得られることを確認していた.しかし,メッセージの多義性の高低を判断するための事前準備の負担が大きいことと,同じメッセージでも実験内容ごとに高低が変化するという問題があった.このため,メッセージ内容については多義性を利用しないこととした.一定時間を思考に与える「質問・解答形式」を提案し,その記憶効果を実験した結果,5秒,10秒,30秒のうち10秒が最も効果的であることが分かった.また,「解答」として正しい作業方法に加えて失敗例の提示による安全意識の向上を確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,中等教育から高等教育前期程度の学習者による化学実験時の危険回避能力の強化を目的としたスマート実験室を対象として,安全な実験を支援しつつも過度な支援は控えて「安全ボケ(依存)」を防ぐシステムの設計原理を明らかにすることを目指している.「質問・解答形式によるメッセージ提示」は,この目的達成に繋がる.さらに,既存の実験室への導入の容易さを意識したシステム構成法を明らかにすることを目指しているが,「物体形状や視点を意識した情報関連づけ方式」や「手首カメラの活用による微小マーカ特定方式」は,既存の化学実験室への導入を容易にする方法として,目的達成に繋がっている.いずれも,年度当初に計画したものであり順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
「1)プロジェクタ投影と対象物の正確な関連づけ方法」において前年度までの基礎検討で明らかになった課題を解決する.具体的には,物体移動時の情報提示位置の計算を局所化することで計算量の削減と視認性の低下を防止する.また,これまで物体形状は円柱で近似していたが,より正確に取得することで,情報提示位置の計算精度の向上を目指す.さらに,プロジェクタの投影光が物体認識に影響を与えることが分かったため,取得画像から投影光を除外する機構を開発する.これらの独立して開発されてきた機能群と「2)微小物体ID特定」と組み合わせて,実験プロトタイプシステムを開発し,平成26年度に予定している化学実験室における実際の実験シナリオ・器具・試薬を用いたユーザ評価に備える. また,安全を第1に考えて本物の化学物質を用いない代替作業での「実験」を検討する.代替作業は,紅茶をいれる作業と化学実験作業の類似性( Schraefel, DIS'04)や,我々が開発した「積み木を用いた化学実験の仮想ヒヤリハット体験法」を参考に決定する.また前年度と同様に代表者(藤波)を中心に藤波研究室の学生4名を研究協力者として加える.化学の専門知識や実験教育方法は,連携研究者(レンゴロ)の協力を仰ぎつつ進める.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度には国際会議と論文誌への投稿を予定しておりその分の研究費を計上していたが,適切な場がなかったためこれを見送ったが,本年度はこれを実施することとしたい.対外発表としては,国際会議1件と論文誌1篇,国内学会5件を予定しており,これらの出張費・参加費・投稿費を計上する. 従来Webカメラを画像入力装置として用いてきたが,平成25年度実施予定の「撮影画像からのプロジェクタ投影光除外」のために高い色再現性と小さな歪みのカメラが必要であると考えたため,マシンビジョン用カメラを購入する.なおアイトラッカー購入にあたり,当時の円高の影響により計画立案時より安く買うことが出来たが,次年度予定の実験プロトタイプシステム開発が,このプロジェクタ投影投影光除外機構追加のために規模が増大するために,学生アルバイト謝金の増額に充てることとしたい. 多様な実験器具の形状を考慮したプロジェクタ投影制御を開発するために,未所有の実験器具を購入する.
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