2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24500156
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Research Institution | Kanagawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
坂内 祐一 神奈川工科大学, 情報学部, 教授 (70622124)
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Keywords | 嗅覚ディスプレイ / 嗅覚順応 |
Research Abstract |
当該研究では、精密な香り射出コントロールが可能な嗅覚ディスプレイを用いて、微小な時間単位で香り濃度を変化させるような動的な香り提示に対する人間の嗅覚特性(特に順応特性)を計測することを目的としている。2年目となる平成25年度は、香りのパルス提示に対する順応特性を調べるいくつかの実験により知見を得た。具体的には(1)快・不快度の異なる香料を用いた香りパルス提示に対する認知特性を調べる実験や、(2)比較的長い時間(1分間)の香りパルス提示が作業能率に及ぼす影響を調べる実験を行った。 (1)快・不快度の異なる香りパルスの2点分離閾値の測定:先行研究において、1呼吸内で2種類の良い香りのパルスを区別できる最小の射出時間間隔である2点分離閾値が求められている。本研究における快・不快2種類の香りを用いた実験によって、計測された2点分離閾値は、提示される香りの快・不快度によらないとの結果を得た。このことは、不快な香りのパルス射出が良い香りのパルス射出と同様に順応を引き起こさないことを示しており、嗅覚検査に良い香り同様に不快な香りも利用できる可能性がある。 (2)作業中の香りパルス提示が記憶作業へ及ぼす影響:ミントなど覚醒効果のある香りの連続的な暴露条件下における作業能率の向上は過去に研究例を見ることができるが、本実験では、ミントの香りのパルス状提示により有意に短期記憶が向上することを示した。被験者アンケート結果から、1分間途切れることなく香りを感じさせることに成功しており、順応を引き起こさない香りのパルス状提示という実験条件が実現された。 平成25年度は上記実験により、不快な香りパルスが良い香りパルス同様、順応せずに認知できることと、1分程度の時間、順応なしに香りを認知させることができるなどの知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、香りパルス射出に対する嗅覚順応に関して部分的な実験データが得られたが、連続射出との比較実験などが不足しており、より客観的な結果を示す必要がある。順応の程度をより定量的に扱えるように、実験・計測方法をまとめていくことが課題として残った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成25年で得られたパルス射出に対する認知結果を基に、連続射出との比較実験を行って、順応をできるだけ定量化することを試みることに主眼を置く。また、ゆらぎなど動的に香り射出濃度を変化させる実験を実施し、主観評価と共に生理指標(脈波、呼吸、皮膚電位など)を計測する。実験では、覚醒・鎮静効果が知られている香料を用いて、パルス射出・連続射出の軸にランダム濃度変化やゆらぎによる濃度変化の軸を加え、動的な香り提示に対する認知特性を明らかにしていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
嗅覚ディスプレイの制御方式を変更するため、嗅覚ディスプレイ制御装置(試作品)を発注したが、納期遅れにより平成26年5月末に納入がずれ込んだため。 上記の嗅覚ディスプレイ制御装置購入のための物品費として支出予定。
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Research Products
(4 results)