2012 Fiscal Year Research-status Report
多重赤外光を用いたインタラクティブサーフェスのための情報多重化に関する研究
Project/Area Number |
24500160
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
松下 光範 関西大学, 総合情報学部, 教授 (50396123)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 多重赤外光 / テーブルトップ / インタラクティブサーフェス / ユーザインタフェース / インタラクションデザイン |
Research Abstract |
平成24年度は、赤外光透過フィルタ(以下、IRフィルタ)と赤外発光LED(以下、赤外LED)を組み合わせ、情報を多重化する方式についての性能向上とアプリケーションの検討を行った。 まず、赤外波長の特性を利用して複数の情報を提示することが可能なテーブルトップオブジェクト(テーブル型情報提示システムと連携し、情報入力装置として利用できるオブジェクト)を提案した.提案方式は,波長の異なる赤外 LED を3種類用いた発光機能を有するオブジェクトと,IR フィルタで作られた複数のコースターから構成される。テーブル型情報提示システムの情報投影面(テーブル面)にこのオブジェクトを置き、発光させることでシステムに入力を与えることができる。ユーザはオブジェクトの下に敷くコースターを取り替えることで,テーブル面に提示する情報を変化させることができる。本年度はこの機構の考案と、それに適したIRフィルタ・赤外LED の波長選定を行った。 また、異なる波長特性を持つ複数のIRフィルタを組み合わせ、情報を多重化する性質をメディアアートに応用し、二つのアプリケーションシステムを作成した。一つは、壁型のインタラクティブサーフェスを対象とした拡張影絵システムShadow++ である。2種類のIRフィルタを用い、一つを人に理解可能な形状パタン、もうひとつをシステムが位置やID情報を読み取るためのマーカパタンに割り当てて組み合わせたオブジェクトを作成し、これをサーフェス面にかざすことで、本来の影とCGの影を組み合わせた豊かな影絵表現が可能になる。もう一つはテーブル型情報端末上で用いる影絵システム 「透影」(英語表記は Layered Shadow)である。このシステムでは、ユーザが赤外発光する懐中電灯をオブジェクトに照射することで、オブジェクトの外形とは異なった影を見ることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の所期の目的は、多重赤外光による「情報の多重化」と「情報の秘匿化」の基本方式の確立、並びにそのアプリケーションの実現である。 基本技術に関しては、3つの異なる波長の赤外光と、それを識別するためのIRフィルタの最適な組み合わせを実験により確認し、3種類の情報の情報識別を可能にした。これにより、物理的には一つのマーカから、波長に応じた複数のマーカパタンを取り出せる「情報の多重化」を実現した。また、2種類のIRフィルタを用意し、一方をマーカパタン、他方を形状パタンとすることで、人には形状パタンしか見えないが、システムにはマーカパタンが見える、という「情報の秘匿化」を実現できた。 また、本技術を応用したアプリケーションを二つ作成した。これらのシステムを国内外の展示会や学会等で展示し、当該技術の可能性や有用性を示した。これらのアプリケーションの新規性と表現力の高さが評価され、国際会議 SIGGRAPH のポスターで学生コンペティションのセミファイナリスト認定(Shadow++)、国内研究会 EC2012 でデモ発表賞(透影)、国際展示会 Laval Virtual で Laval Virtual Award (Layered Shadow)を各々受けた。 更に、これらに加えて、赤外LEDの「発光に必要な最低電圧が低い」という特性を利用して、電力源にゼンマイ発電を利用し、電池交換の必要性を排除したテーブルトップオブジェクトを試作した。これにより、情報の多重化とメンテナンス性の向上を両立させたテーブルトップオブジェクトの実現が可能になった。 これらにより、平成24年度に予定した計画を越えて達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、平成24年度に実現した技術を利用して、これらを用いたインタラクティブシステムのデザインを行う。複数のマーカーを組み合わせ、逐次的に情報の追加・重畳を行える枠組みとして、積層マ―カの実現を目指す。例えば、複数種類のマーカパタンを用意し、各マ―カのパタンに応じて別々の情報を割り当てておき、それらを単体で利用した場合と、組み合わせて利用した場合とで異なる情報が得られるようにする。この方式を実現することで、付加する情報を変化させたり(新たなマ―カを追加する)、削除したりする(張り付けたマ―カを取り除く)ことができるようになり、アプリケーション実装時における拡張性を高めることができる。また、赤外LED を動的に変化させることで、時間軸方向に異なった情報列を提示する方式についても検討を勧める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本成果を国内外の展示会や学会等で公表するために、学会参加や展示・発表に必要な資金に重点的に予算を割り当てる。また、赤外LEDやIRフィルタ、各種電子パーツなど、基本方式を実現する上で必要な部品の購入に当てる。本年度利用した赤外光取得用カメラおよびその処理のためのPCに関して、それらの性能が十分ではなかったため、処理に遅れが生じる、撮像した画像が粗く識別性が低い、等の問題が生じていた。これらを改良し、より時間応答性と識別性が高くアプリケーションを実現するために、ハードウェア環境(PC 及びカメラ)の整備を行う。これによって、より実用性の高いシステム構成が可能になると考えている。
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Research Products
(8 results)