2012 Fiscal Year Research-status Report
同所的種間相互作用に基づく学習とニッチ構築の共進化に対する複雑系アプローチと応用
Project/Area Number |
24500168
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鈴木 麗璽 名古屋大学, 情報科学研究科, 准教授 (20362296)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 学習 / 表現型可塑性 / ニッチ構築 / 共進化 / 資源共有問題 / 個体ベースモデル / 人工生命 |
Research Abstract |
本年度は次のことを行った.1)野鳥の歌行動の時間的重複回避に着想を得た,複数種間での資源利用重複回避行動の共進化を議論可能な一般モデルの構築と実験,および,その解析を進めた.具体的には,各種が共有資源(時空間や音響空間など)を種特異的な長さや大きさで周期的に利用する場合において,利用のタイミング(空間上の利用位置やタイミング)をずらす確率を可塑性と見なし,資源の占有度合いに応じて各種の可塑性が共進化するモデルを構築した.その結果,資源利用期間の長い種は回避しない一方で,残りの資源利用期間の短い種が積極的に重複回避するという可塑性の分化進化の傾向が種々の条件で生じうることが判明した. 2)自然界では1)で典型的に想定したような時間的な資源の重複回避だけでなく,空間的な資源利用の重複回避も遍在する.そこで,個体が二次元平面に分布し近傍の個体とのみ周期的に情報発信し合う状況を想定した上で,情報発信の時間的な重複回避行動に加え,重複時に個体が空間を移動する空間的な重複回避行動も同時に進化する個体ベースモデルを構築し,両者の共進化過程の解析を行った.その結果,情報が周囲に届きにくい場合には時間的重複回避を主に利用する一方,情報が広範囲に届く場合には空間的重複回避を利用するように進化することが判明した. 3)学習とニッチ構築の共進化に関するミニマルなモデルを構築し,特にニッチ構築によって改変された環境条件が次世代に受け継がれる生態的継承が系の挙動に与える影響について解析した. 4)可塑性や学習がコミュニケーション能力の進化に及ぼす影響,ニッチ構築が協調行動の進化に与える影響,外界と相互作用する自己組織系,ゲーム戦略とネットワーク改変戦略の共進化,被食捕食関係の共進化等,学習・ニッチ構築の進化,および,共進化系に関わる構成論的モデルの構築と解析を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に示したように,これまでに基礎的な進化モデルを構築し,基本的な知見を得ることができた.加えて,空間的局所性を盛り込むことで,相互作用のネットワーク構造の影響を考慮した進化モデルについても既に予備的な研究を始めている.学習,ニッチ構築,共進化に関連する他のモデルも並行して分析を進めており,研究計画を順調に遂行できていると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
次の事を中心に進める予定である. 1)現在までに得られた知見を,会議発表予稿や投稿論文などにまとめ成果とする. 2)1)の知見をさらに深めるため,可塑性の分化進化の創発に特に焦点を合わせたモデルの構築と理解を進める. 3)空間的局所性および相互作用のネットワーク構造が重複回避行動の進化に与える影響の更なる解析を行う. 4)野鳥の生態と得られた知見の比較の検討を行う. 5)得られた知見の工学等への応用の検討を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は,研究開始初年度の基礎的な実験の段階であり既存の計算資源を活用して研究が遂行可能であったこと,新機種の発売予定の影響などから,当初予定していたワークステーションの購入を見送った.その結果繰り越した予算は,次年度において,より高速な計算機を安価に購入し計算環境を順次拡充することに当てる予定である.また,本研究は生態・進化・工学応用と学際的に分野をまたぐため,広い分野の国際会議,国内研究会等で研究発表を積極的に行い,情報収集に努める予定である.
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