2013 Fiscal Year Research-status Report
同所的種間相互作用に基づく学習とニッチ構築の共進化に対する複雑系アプローチと応用
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24500168
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鈴木 麗璽 名古屋大学, 情報科学研究科, 准教授 (20362296)
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Keywords | 学習 / 表現型可塑性 / ニッチ構築 / 共進化 / 資源共有問題 / 個体ベースモデル / 人工生命 |
Research Abstract |
本年度は次のことを行った.1)複数種間での資源利用重複回避行動の共進化を議論可能なより一般的なモデルの構築と実験,および,分析を進めた.各種が有限のニッチを繰り返し利用する場合において,利用の重複が発生した際に自らの利用戦略を変更する確率を行動の可塑性と見なし,資源の占有度合いに応じて各種の可塑性が共進化するモデルを構築した.その結果,ニッチの混雑度合いに依存して異なる可塑性の分化傾向が創発することが判明した. 2)1)のような傾向が実際の野鳥の歌行動において観察されるかどうかを調査するために,ロボット聴覚システムHARKを利用した音環境観測の可能性について予備的検討を行った. 3)学習とニッチ構築の共進化に関するミニマルなモデルを構築し,特にニッチ構築によって改変された環境条件が次世代に受け継がれる生態的継承が系の挙動に与える影響について解析を継続した.成果の公表に向けて知見の整理を進めている. 4)種間で共有する資源の利用戦略が共進化する具体的な生態条件として,カンコノキとハナホソガの絶対送粉共生系における,花の匂いの性的二型とその選好性の共進化に注目し,共進化モデルの構築とその基礎的な分析を行った.現在のところ,カンコノキの授粉とホソガの産卵が同時に生じ利益を共有するとき,カンコノキの雄花雌花の匂いの分化とホソガの能動的な授粉行動が創発することを確認している. 5)コミュニケーション能力とその可塑性の進化モデルを構築し,学習が進化を促進するボールドウィン効果の発生に関して,その傾向を分析し,成果を公表した. 6)本課題に関連する学習,ニッチ構築,ネットワーク構造,共進化等に関する構成論的モデルの構築と解析を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に示したように,より抽象的なモデルを構築することで,広く資源を共有する複数種間での可塑性の共進化ダイナミクスに関して理解を進めることができた.同時に,野鳥の歌行動の観測と相互作用過程の情報論的分析や,絶対送粉共生系の共進化モデル構築など,実際の生態との比較や方法論の応用に関して新たな展開の足がかりをつくることができた.ネットワーク構造,学習,ニッチ構築,共進化に関連する他のモデルも並行して分析を進めており,研究計画を順調に遂行しつつ押し広げることができたと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度が最終年度であり,次の事を中心に進める予定である.1)複数種の可塑性の共進化モデルにおいて,更なる条件設定の影響等を分析する.2)絶対送粉共生系の共進化モデルの分析を進める.3)野鳥の生態の調査と得られた知見の比較検討を進める.4)得られた知見の工学等への応用の検討を行う.5)全体を総合し,会議発表予稿や投稿論文などにまとめ成果として公表する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は比較的安価に高性能な計算機を購入することができ,最終年度での研究成果の発表や公表等のために一部繰り越すことが適当と判断したため. 次年度も必要に応じてコストパフォーマンスの高い計算機資源等を適宜購入し,研究体制を維持するとともに,最終年度における研究成果の発表や公表等のために活用する.
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