2012 Fiscal Year Research-status Report
エージェントシステムによる避難指示と避難行動の解析と減災への応用
Project/Area Number |
24500186
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
高橋 友一 名城大学, 理工学部, 教授 (80278259)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 知的エージェント / 群衆シミュレーション / 避難情報伝達モデル |
Research Abstract |
本研究は、避難行動において個々人の動きが全体の避難効率を決める重要な要素の一つである事に着目し、身体的な相違の他に個人の心理状態、避難する人への情報提供などの考慮した避難シミュレーションを構築する。 具体的には、過去の災害報告書を参考に、数千人規模で建物からの避難行動における人の動きを、人を一律に扱うマクロレベルではなく、個人レベルのモデルで表現する。そして、マルチエージェント指向シミュレーション(MABS)を用い、人への情報の与え方や人の状態を変化させる要因 -- 例えば、危険をおかして他の人の救助に向かうなど愛他行動 -- を含め検討する。 実証実験をすることはできない様々な状況をシミュレーションする事により、避難を円滑にするために情報を避難者にどのように提供すると効果があるかの指針を検討する。MABS による避難シミュレーションとして、(1) 避難者の心理状態を、BDI(Belief - Desire - Intention) モデルで表現する。(2) 避難者エージェントは、老若男女や身体的特徴に加え、性格や家族関係等の人間的な属性を持つ。(3) 避難指示に加え、会話による情報共有を可能にする。等、従来研究で取り扱われていない機能を検討する。 そして、館内放送による情報提供、それによる避難者の心理状態が引き起こす避難行動の相違などシミュレーションで示す事ができ、大型商業施設での避難計画の評価が可能になり、より安心安全な生活に役立つ避難シミュレーションが実現できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2012年度は、以下の項目について検討を行い、初期に設定した機能の実現、検証をした。 1. 東日本大震災の調査で、避難にあたって防災警報を見聞きした人の割合は40% 前後との報告があり、避難者の災害状態認識、事情の相違から切迫避難・用事後避難・直後避難と避難開始時間に相違が生じる。この避難者の状態・事実認識は、避難誘導や周囲の人からの情報によって変る。この様な状況をシミュレーションできるエージェントモデルの検討、システム開発した。 2. 世界貿易センタービル崩壊時においては、建物から階段を使用して避難する際に救助隊とのすれ違いや避難者の休憩が避難の障害になった。他人との衝突を考慮する人格や身体的な特徴を考慮した人の流れ(隘路・階段での渋滞など)を計算する粒子モデルを検討した。 3. 避難者への避難指示がすべて人に伝わり、聞いた人が内容を理解するとは限らない。人によって誰から聞いたかにより、その情報の信頼度は異なり、その後の行動が変化する。いつ、どの程度の情報が伝わる事で、何割の人が行動を開始し、全体としての避難行動に結びつくかを評価するシステムの検討を開始した。 4. 学外の研究協力者Minnesota 大学からJSPS SUMMER PROGRAM 2012の枠組みで6月中旬から8月中旬の2ヶ月間研究者を受け入れ、親子関係といった人間関係を取り入れた避難行動のシミュレーションの検討を実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
災害時に迅速な避難行動を妨げる要因として、避難指示が十分に伝わらない事や避難する人それぞれの事情がある事等が指摘されている。避難する人の状態をエージェントモデルで表現し、情報を連絡、提示する事で人(エージェント)に避難など行動をさせる。 その個々のエージェント行動から全体の避難行動が如何に変化するかをシミュレーション解析する上で、迅速な避難行動をするのに重要な要因となる避難放送、救助隊の指示、会話による情報共有を考慮したシナリオを検討する。 具体的には、館内放送や警備員から適切な情報提示があるかないかで、避難行動は変化する。提示される情報の完全さ、提供情報から行動へ時間の相違による避難行動の質的な変化を検討する。そして、シミュレーション結果から得られる知見を、災害時の避難放送や防災計画に反映する事で、減災といった安心安全な社会構築に役立てる事を目的とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1) 2013年5月にアメリカ(Minnesota,St,Paul)で開催されるAAMAS2013で発表する。そこでは、2012年度の成果である内容をposter発表、併設で開催されるworkshopで口答発表する。共同研究者であるMinnesota 大学 Gini教授の研究室を訪問し、意見交換する。 (2) 関連の国際会議に投稿する論文の英文校正、および会議登録費に使用する。 (3) 機器としてプリンターを購入する。
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Research Products
(5 results)