2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24500203
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
西野 隆典 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40329769)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 残響下音響信号処理 / 超指向性音源 / マイクロホンアレイ / 数値解析 / 確率モデル |
Research Abstract |
高臨場感音場再現・生成を可能とするシステムの基礎技術として,超指向性音源を用いた再生技術,ならびに任意の音場における音響事象の観測技術の検討を行った。本年度得られた成果は,1) 超指向性音源の反射波を利用し,実環境下(残響時間350 ms程度の会議室)での音像制御の実現,2) 遠隔発話における音声強調システムの予備検討,3) 楽器音などの音響信号の解析,である。 実環境下での音像制御においては,超音波振動素子を用いた超指向性スピーカによる音像制御手法を検討した。本手法では,超音波暴露問題を避けるために反射波を用いており,この反射波の音響経路を変化させることによって,特に上下の音像定位に関して,従来研究よりも音像制御可能な範囲を上下に拡張することができた。 遠隔発話における音声強調は,任意の空間内の音響事象を効率よく収集するためのシステム開発に向けた検討であり,本課題では数値解析的アプローチによるマイクロホンアレイの開発と,既存デバイスの利用との両面から考察を進めた。 音響信号の解析においては,本システムの観測対象となる音声や楽器信号の特性を調査するため,楽器音の時間・周波数構造を高解像度に分析するとともに,それぞれの時間・周波数構造を確率モデルで表現することを試みた。 実環境下において,受音点より離れた位置にある音源の信号を効率よく収集・解析するための,マイクロホンアレイシステムの検討や,収録された音響信号の品質評価方法の開発が今後の課題となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の達成度について,音像制御,集音技術,音響事象解析の3項目について述べる。 音像制御においては,超指向性スピーカを用い実環境下での音像制御手法を検討した。本手法では,従来の代表的な音像制御手法と同様にスピーカ間の音圧レベル差を用いて音像位置を制御している。従来技術では,無響室などの残響が少ない環境においては鉛直方向の音像制御が正しく行われているが,家庭環境や会議室など残響のある環境では,音像位置制御は上下に拡張することが困難であるという課題があった。本手法では,用いた音源が有する超指向性に着目し,音響経路を変化させることによって音像制御可能な範囲を上下に拡張することができた。なお,本成果は,4件の学会発表(国内2件,国外2件)にて報告した。 集音技術においては,受音点から離れた位置にある音源の信号を効率よく収集するための技術として,既存システムである指向性を持つマイクロホンアレイの利用の検討と,両耳(バイノーラル)収録技術を参考としたマイクロホンシステムの開発の検討を行った。既存技術の利用による集音では,カメラ映像と組み合わせることで音源方向の特定精度の向上が図られた。また,マイクロホンシステムの開発では,3D CADと数値解析との組み合わせを検討し,システムを実際に作成することなく音響特性を求めることへの道筋をつけることができた。 音響事象解析においては,楽器音の時間・周波数構造を高解像度に分析するとともに,それぞれの時間・周波数構造を確率モデルで表現することを試みた。複数の音が存在する場合に,加算モデルで表現可能か否かを検討した。なお,本成果は2件の学会発表(国内2件)にて報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
集音技術についての検討に注力する。具体的には,既存マイクロホンアレイの複数利用による音声強調の検討と,より複雑な形状に対する数値解析である。 既存のマイクロホンアレイを単独で利用した場合,アレイが形成する指向性の線上にある音が強調され,線上に目的音以外の音源が存在した場合には,個々の音源を抽出することは困難となる。そこで,マイクロホンアレイを複数分散配置させ,処理結果を統合することで,さらなる強調効果が得られることを期待する。統合にあたっては,機器ごとのサンプリング間隔の違いなど,機器間の特性の違いを吸収した手法の検討が必要となると考える。 数値解析においては,検討する形状を多様化し検討を進める。特に,水平面内での音源位置を特定することが可能となるよう,音源と耳道内との間の音響特性である頭部伝達特性における特徴量を参考に検討を進める。この特徴量が表現できるような,マイクロホンアレイの形状を決定するためには,マイクロホン設置位置など,多くの条件にて解析を行う必要があるため,効率よく解析できる手順の確立も重要な課題となる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
集音技術の検討に係る機器と収集したデータの分析・蓄積に係る機器の整備への支出が必要となる。また,収録実験に関して協力者への謝金が必要である。得られた成果の公表に係る経費(学会発表参加費,旅費等)も計上する。
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