2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24500213
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
中島 弘史 工学院大学, 情報工学部, 准教授 (40613641)
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Keywords | 睡眠時無呼吸症候群 / 音響特徴量 / 機械学習 |
Research Abstract |
2013年度の成果は、1.呼吸音データからの音響特徴量の抽出処理の構築、2.抽出した特徴量に基いて機械学習により呼吸状態を判定する処理の構築、3.本研究の成果を一般公開するためのWEBページの構築、4.実際の睡眠時無呼吸症候群(SAS)の入院患者の呼吸音データを収録する体制を整えたことの4点である。1および2では、2014年3月の日本音響学会春期研究発表会にて成果を公表した。3は、現在の試験中であり、2014年6月には一般公開予定である。4は、東京大学付属病院老年病科でSASが専門の山口泰弘医師を通して、月に1~2例の入院時の呼吸音データを得る体制を構築した。2014年5月中には本データの取得に関する倫理審査委員会を通過予定である。 1、2の成果の概要を述べる。1の音響特徴量の抽出処理の構築では、ピーク周波数、ピーク周波数のレベル、エンベロープ波形の大きさ、メル周波数ケプストラム係数(MFCC)、フォルマント周波数の5つの音響特徴量を計算した。いびきがある場合とない場合で比較したところ、ピーク周波数およびエンベロープで顕著な違いがあることがわかった。またMFCCは、次元数が多く、目視では顕著な差は確認できなかったものの、後述する機械学習による判定では判別に有効であることがわかった。 2の機械学習による呼吸状態の判別処理の構築では、(1)機械学習機としてFisherの線形判別、(2)線形判別分析、(3)サポートベクターマシンの3種類について、複数の特徴量の組み合わせで性能を評価した。この結果、学習機はLDAとSVNが優れており、特徴量はピーク周波数、レベル、エンベロープの3つの同時利用で、誤判定率が数%以下になり、MFCCの利用でさらに低減できることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2013年度の当初の目標は、睡眠時無呼吸症候群の呼吸音から呼吸状態を自動判別するアルゴリズムの構築であり、実際に複数の音響特徴量の抽出と機械学習による判別を行う処理を構築し、ほぼ誤判定率0の結果を得られたためである。しかしながら、現在の誤判定率の評価時に利用した呼吸音のサンプル数は少なく、また学習時に利用した呼吸音のサンプルもいびきがはっきり聞こえるSN比が高いデータで行ったものである。そのため実際に利用する際の性能は、年齢や性別、SN比が異なる多種多様なサンプルで試験を行う必要があり、もうすこし時間をかけて、音響特徴量の組み合わせやアルゴリズムの改良を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
機械学習に入力するデータのサンプル数を大幅に増やすとともに、評価についてもさまざまな条件のデータに対し行うことで、より広く正確に利用できる呼吸音判定アルゴリズムの構築を目指す。また、睡眠時の呼吸音全体に含まれるいびきの長さや回数から、SASの可能性について判定するだけではなく、正常な人のいびきと、SAS患者のいびきの音響的な特徴の違いを、共同研究者で、SAS専門の医師である、山口泰弘医師の協力の元に明らかにしていくことで、より高精度なSAS判定アルゴリズムの構築を目指す。 現在の研究を遂行する上での課題は、人手の不足である。機械学習を行うためには、正解ラベルの付いたサンプルが必要であり、ラベル付けに多くの時間を要する。またSAS患者の呼吸音データを東大病院から大学に持ち出す際に、個人情報を含む寝言などがないかをチェックし、あった場合はその部分を削除する加工を行う必要があり、やはり多くの人手を要する。(自動音声認識等の利用なども検討したが困難である。)この対策として、当初PCやソフトウェア購入に充てる費用を削減し、アルバイトを雇い、人件費・謝金として利用する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
全体として次年度使用額が生じた原因は、前年度(2012年度)に使用する予定であった予算が圧縮されたことによる。本年度は、当初直接経費よりも、約10万円多く予算を利用した。これは主に謝金を含む人件費が当初予算より多くなった事による。呼吸音データのラベル付けや、WEBページの作成、本年度から研究補助者となる山口医師への謝礼など、予想より多くの外部サポートが必要だったためである。 本年度は、呼吸音サンプルに対する正解データのラベル付けや、SAS患者の呼吸音データを持ち出す際に個人情報保護のため、寝言などが含まれていないか手動でチェックし、寝言などが含まれた場合は削除するという作業が必要となる。そのため、当初予定よりも、人件費を多く支出する予定である。
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Research Products
(3 results)