2012 Fiscal Year Research-status Report
出現頻度の偏った母集団の希少事象の認識のための通信路符号化モデルの構築
Project/Area Number |
24500215
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
伊藤 克亘 法政大学, 情報科学部, 教授 (30356472)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西島 利尚 法政大学, 情報科学部, 教授 (70211456)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 音楽情報処理 / 擦弦楽器 / カオス / 国際情報交換 / スペイン / 演奏意図 |
Research Abstract |
今年度は、当初計画していた中の音楽情報処理に関する研究で目覚ましい進展があった。具体的には、擦弦楽器の発音現象をカオスでモデル化したことである。擦弦楽器の研究に関して、申請時に進めていた音色のモデル化に加えて、音量、リズムのモデル化を実施した。いずれも、演奏者の動作と弦の振動が元になっている現象である。音色に関しては、従来は、線形システムに微分方程式を組み合わせて事変とするようなモデル、もしくは、確率過程としてモデル化されていた。 その現象に対し、試行的に整備していた演奏コーパスに基づいて、分析合成を行い、様々な主観評価実験を行った結果を仔細に検討した。その結果、音色に対する知覚的な影響が非常に大きい発音部は、カオスでモデル化するのが最適であるとの仮説を得た。この仮説をもとに予備実験を行った結果、従来より高品質な合成を得ることができた。この成果については、9月の日本音響学会全国大会で発表し、大きな反響を得て、発表者が学生優秀発表賞を受賞した。この知見に基づき、高品質な擦弦楽器の演奏コーパスを整備した。また、申請時に進めていた音色のモデル化については論文を投稿し採択された。 また、擦弦楽器に関しては、日本国内では演奏者のモデル化や物理的なモデル化があまり盛んではない状況である。それに関して、国際的に最先端のスペインのポンペイファブラ大で議論を行い、非常に有益な示唆を受けた。 また、音楽情報処理の作曲、編曲の分野で、和音の使用頻度に関して、和音進行に緊張感を与えるような和音の使用については、希少現象としてモデル化することが有効そうであるという新しい知見が得られた。 また、音楽情報処理におけるいわゆるミスと演奏意図としてのゆらぎを区別して正しく意図を推定する問題においても、ミスを希少現象としてモデル化することで可能となる見通しが得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
音楽情報処理については、予定よりはるかに進捗した。特に、希少現象とカオスの関係について発見したことは本課題の目的において想定以上の進捗を実現した。また、演奏意図の推定という問題についても、ミスを希少現象としてモデル化することで、隠れた演奏意図を推定できるという発見があった。ただ、このモデル化は、情報源の符号化であり、その点に関しては、申請時に想定していなかった展開である。 それらも含めて、通信路符号化に基づく理論化は、想定した進捗には至っていない。 また、音声情報処理については、放送コンテンツについて、ディジタルTVのデータ整備はある程度を行ったが、応用を再検討した結果、ラジオコンテンツの方が話者識別の必要性が高いという結論に至った。2013年度にはラジオコンテンツを対象とするように計画を修正する予定である。 これらを総合すると、想定した通りになっていない面はあるが、全体としてはおおむね順調な進展であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
申請時の研究計画(1)「符号化理論からのモデルの精緻化」に関しては、主として音楽演奏について、意図した逸脱とミスによる逸脱の分離のための情報源符号化に変更する予定である。2012年度に既に研究会などで発表を行っており、現実的な変更である。 研究計画(2)「話者識別システムの評価」については、応用としての必要性などを再検討した結果、直接的なラベルが付与されていないラジオコンテンツを対象とするように変更する。手法などは共通するため、妥当な変更である。 研究計画(3)は(4)と統合して「演奏意図の推定」という課題に変更する。これは研究計画(1)の理論化の応用であり、理論化の正当性の検証となるため、健全な研究計画遂行のために妥当な変更である。 また、新規の課題の発見のため、歌声の演奏表現、演技音声、和音の転記などの課題に取り組む予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
放送コンテンツコーパスの整備、および、演奏意図推定のための音楽コーパスの整備を行う。そのための収録作業の謝金やデータ整備費を出費する予定である。また、昨年度の成果や新規課題の成果発表のための旅費や論文投稿料、学会参加費を出費する予定である。
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