2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24500237
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
伊藤 聡 岐阜大学, 工学部, 准教授 (70291911)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 運動制御 / 平衡 / 知覚補正 / 学習 |
Research Abstract |
本研究はヒトの運動と知覚に関する研究である.運動では視覚や体性感覚などの感覚情報フィードバックに基づいた制御が行われており,感覚に基づいた認知である知覚が運動に影響を与えるであろうことは理解しやすい.しかし,逆に運動することにより知覚が変化する場合があることを,ヒトの運動制御,特に申請者らがこれまでに行ってきた平衡維持において実験的に示すことを目標としている. 本年度は,運動学習および平衡知覚テストで用いる実験装置の設計・製作に取り組んだ.被験者の安全性を考え,立位ではなく座位での実験を実施する.これに必要な被験者の座る椅子の製作を行った.座位での平衡を乱すためロール軸およびピッチ軸の座面角度を自由に変えられるほか,被験者に外乱を与えれられるよう平行移動の自由度を1つ取り付けた.またロードセル4つを長方形座面の各4隅に取り付け,被験者の重心が座面のどのあたりに位置するかを検知できるようにした.また,ヘッドマウント・ディスプレイへの画像投影が確認でき,モーションキャプチャーシステムによる運動計測と制御の導入に関しても目処がついてきた.この椅子を使った実験実施に関して,岐阜大学大学院医学系研究科医学研究等倫理審査委員会の承諾を得ることができた. この特殊な椅子を用いた座位姿勢の運動計測システムは運動の計測ばかりでなく,取り付けた3つのアクチュエータを用いて実験者側から意図した外乱を被験者に対して加えることができる点で意義が大きい.また,被験者の動きや姿勢が計測できること,座面の動きや傾きとそれにかかる重心位置が計測できること,平衡に影響を与えるであろう視覚がヘットマウンド・ディスプレイによりコントロールできることが解析の観点から重要であり,これらが同期して実現できるようになっている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,「平衡制御の計測実験を行うための装置の設計・製作と実験環境の整備を行う.」という計画を立てていた. 当初予定していた,ピッチ・ロール軸で回転し,同時に平行移動が可能となる3自由度の椅子が完成し,当大学内の倫理審査委員会から実験実施の承諾が得られ,いつでも計画した実験が開始できる状況にもってこられたのは大きな成果である.ゲームコントローラによる被験者からの実験結果の回答入力や,モーションキャプチャーによる被験者の運動の計測,ヘッドマウント・ディスプレーによる視覚情報提示については,完全には実験システムのプログラムには組み込みきれてはいないが,個々でのテストでは意図したとおりに動作しており,後は全体を統合するだけの問題と認識している. このような状況より,研究の目標はおおむね順調であると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
パイロットテストを通した評価・検討後,実験手順の確立を行う. 運動学習のパラダイムとして,以下に提案する「CoP ForceField」を試験する.平衡制御においてはCoP(Center of Pressure)がバランスの重要な指標の一つとなる.このCoP の物理量(位置や速度)にあわせて傾斜台を回転させて,平衡に対して外乱を与える.この外乱提示法では,座面はCoPの物理量に比例した大きさで,CoPの動く方向と一致する水平回転軸周りに回転させる.つまり,被験者には,CoPの変動に対し横方向の座面回転に対する平衡維持(状態の動き)を学習させる.この場合,CoPが変動しない限り座面の回転は起きない.そこで,ステージの平行移動により生じる慣性力でCoPの変動が起きるよう,被験者にはステージをコントローラ操作により所定距離平行移動させる. 知覚テストでは,被験者を開眼もしくは閉眼で椅子に座らせ,被験者の体幹の傾斜を能動的もしくは他動的に変化させた後,左右のどちらに傾いているか二者択一で回答させる.様々な角度の回答を集め,Psychometric Functionを作成することで被験者の心理的な直立姿勢がどの方向にあるかを判定する. 上記に示した手順を原案に実験手順を検討・構築し,運動学習により平衡感覚の変化が生じるかのパイロットテストを行う.パイロットテスト結果をフィードバックし実験手順の改良を適宜行い,最終的な実験手順を確立する. また,バランス制御に影響を与えるであろう視覚について,視覚認識の運動学習との関わりも重要であると実験手法を検討するうえで感じるようになった.そこで,運動として平衡にとらわれず,運動学習と視覚による認知についても同時に調べることにする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費は,主に昨年度製作した実験装置の維持や改良に用いる.それらは主に機械部品であるが,状況によっては消耗品となるモータや,力センターなどの買い替えを行う.ゲーム用デバイスなど簡単に使用できるインターフェース機器が利用できる場合はその購入にも当てる. 成果発表として国際会議での発表を予定している. 被験者を使った実験ができるようならば,謝金として利用する.
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