2012 Fiscal Year Research-status Report
事象関連電位を指標とした主観量の定量化に関する研究
Project/Area Number |
24500250
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
田中 元志 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50261649)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新山 喜嗣 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90208116)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 事象関連電位 / P300 / 主観評価 / 画像 / 視線 / 画質 / 好み |
Research Abstract |
画像を用いた主観評価について,事象関連電位(ERP)を主観量の指標とするための実験方法(測定部位,評価課題など)に関する検討を中心に行った。また,主観評価時のERPの分布を検討するため,マッピングプログラムをMatlabで作成した。観視条件などはこれまでの実験条件と同じにし,視距離を画面高の約4倍とした。評価時の脳波を国際10/20法に従う19部位で測定し,画像提示100 ms前からの1秒間を一試行として加算平均処理を行い,ERPを抽出した。なお,被験者を用いた実験は,秋田大学の倫理審査委員会の承認を受け,すべての被験者から同意書を得て行った。以下に結果をまとめる。 (1) 品質劣化画像を「よい,やや悪い,悪い」の評価語を用いて主観評価させた。「よい」と「悪い」の評価に対するERP成分P300は,Pz周辺ではこれまでに得られた結果と同様に同程度の振幅で出現した。一方,F8では「よい」と「悪い」の評価による違いが見られた。しかし,ばらつきが大きく,嫌いなものが含まれる場合の識別に利用できるか検討していく必要がある。 (2) 画質評価(比較評価)時のERP波形ではP300に1つのピークが,好み評価(単一評価)時では2つのピークが見られた点について,食品画像(寿司)を用い,比較評価法で画質および好み評価させた。ERP波形はこれまでと同様の結果となり,画像の内容や評価方法よりも,画質と好み評価における脳内処理の違いが現れている可能性が示唆された。また,F7において画質と好み評価でP300振幅に違いが見られた。 (3) 視線情報をERPと組合せて利用するための基礎検討として,寿司画像を2 枚同時に提示して,「好き」と「嫌い」の評価語でそれぞれ選択評価させたときの視線とその停留時間を測定した。評価された画像に対する視線停留時間が評価されなかった画像に比べて長くなることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,ERPを主たる指標として好み評価を定量化するために,脳波の測定部位,評価課題など,実験方法に関する検討を中心に行った。これまでの3部位(Pz,Cz,Fz)での実験では「好き」と「嫌い」に対してP300は同様に出現したが,評価対象には被験者が「好き」なものも「嫌い」なものも含まれるため,両者の識別が課題となっている。今回の19部位での測定から「よい」と「悪い」のように両極となる評価語を用いた課題において,F8でP300振幅に違いが見られた。ばらつきが大きく,嫌いなものが含まれる場合の識別に利用できるか検討していく必要があるが,新しい知見である。画質と好み評価におけるERP波形の違いについては,画像の内容や評価方法よりも,画質と好み評価における脳内処理の違いが現れている可能性が示唆された。P300の特徴パラメータ抽出のための重要な知見と言える。また,F7において画質と好み評価で振幅に違いが見られた。これらの結果から,今後の脳波測定では,P300が大きく検出されるPz,Cz,Fzに加え,F7とF8で測定する予定である。 好み評価時の視線測定の結果から,評価によって視線の停留時間が異なり,視線情報の利用の可能性が得られた。今後,主観評価と視線停留時間の関係についても検討していく。また,ノイズ対策が大きな課題であるが,ERPとの同時測定が実現できれば,主観量検出における確度向上が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,画像を用いた主観評価について,主観評価時のERP測定と課題の検討,および脳内処理との関連についての検討を中心に行う。被験者として本学学生を含む健康な成人の方々を予定している。なお,本研究は,秋田大学倫理委員会の承認を受け,実験内容について同意を得た上で測定を行う。 (1) 外観の好み評価,および画質評価させたときのERPを測定し,主観評価と対応のよい特徴量の抽出方法を検討する。ERP測定においては,24年度の結果から,国際10-20法のFz,Cz,Pz,F7,F8を主な測定部位とする。評価項目,評価対象を整理し,条件を変えて,計測と解析を繰り返し,データを蓄積・整理する。なお,提示画像には,従来の2D画像に加え,3D画像を用いることも計画している。そのため,3Dの評価用画像の作製と画像提示システムの構築を行う。そして,ERP測定のための実験条件および評価課題について検討を加える。3D画像を用いた評価とERPの関連についての検討は,平成26年度を予定している。 (2) 評価時のERP波形の特徴について,評価対象,評価項目をパラメータとし,主観評価と脳内処理の関連を検討する。主観評価時のERPを国際10-20法に従った14部位で測定し,24年度に開発したプログラムを用いてマッピングを行い,比較する。また,評価時の視線の動きを測定し,視線の停留時間と評価およびERPの関連を検討する。 平成26年度は,蓄積した多くのデータを整理し,また追加して,主観評価時のERP特徴量を数値的に抽出する方法を検討し,その確立を目指す。また,評価時の脳波と視線の同時測定を検討し,視線情報を利用した確度向上の方法を検討する。そして,画像提示を用いた,ERPを指標とする評価法を提案する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では,画像を用いて,事象関連電位と主観評価の関連を解明するために,脳波計測を行う。平成25年度は,従来の2D画像に加え,近い将来普及することが予想される3D画像を用いた場合について検討するため,3D画像の作成および提示システムを構築する。そのため,3D表示に対応した40型程度の液晶モニタ一式を備品費に計上する。評価用画像に用いる原画像の撮影には,現有の3Dビデオカメラを利用する。また,ソフトウェアでの作成も考えている。そのため,評価用3D画像の加工および作成用のソフトウェアを消耗品費に計上する。また,昨年度に購入したERPデータ解析用ソフトウェア(Matlab)の更新費,脳波計測用の電極およびペーストなど,脳波および視線計測システムの改良や周辺回路の作製などに必要な電子部品類,ケーブル類,データ記録保存用の記録メディア(HDD,DVD-R等)を消耗品費に計上する。 研究成果公表のための経費は,旅費および研究成果投稿料から支出する。また,脳波計測には被験者の協力が必要不可欠であり,謝金を計上する。
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