2013 Fiscal Year Research-status Report
“心地よい”音楽聴取環境の感性情報処理:潜在記憶と視聴覚相互作用による計算モデル
Project/Area Number |
24500259
|
Research Institution | Hokusei Gakuen University |
Principal Investigator |
後藤 靖宏 北星学園大学, 文学部, 教授 (30326532)
|
Keywords | 視覚情報処理 / 音楽聴取 / 聴取環境 / 眼球運動 / 同期 / 注意 |
Research Abstract |
本研究計画の中核となる年度であった。聴覚情報処理である音楽認知過程と、視覚的情報処理としての聴取環境との関係を検討するために、これまでの研究(後藤, 2005c)によって性質の異なることが保証されている2種類の空間(「心理的緊張を生起させない空間」と「作業目的の機能的空間」)を設営し、その中で聴き手に音楽を自由に聴取させることによって2つの実験を行った。 1つ目は、設営した空間それぞれに、性質の異なる「照明」を組み合わせ、その中で音楽聴取をさせて人間の生理的心理的変化を調べる実験であった。光色(白熱色/蛍光色)と照明方法(直接/間接)を操作し、その中で被験者に音楽を聴取させ、音楽聴取前、聴取中および聴取後における生理的反応と心理的反応の変化をそれぞれ調べ、両者の対応を検討した。この時に操作する音楽の変数は「拍節性」、「テンポ」、「音圧」および「感情価」であった。実験の結果、同じ音楽でも、聴取する空間が異なれば音楽および空間に対する印象が変化することを示唆する結果が得られた。 2つ目は、音楽と照明の“同期”を操作した際の注意の分配について調べる実験であった。上記空間内の複数位置に照明を設置し、それらの照明の「点滅」および「光色変化」と、音楽の「拍節的アクセント」の同期性を操作した。指標として眼球運動を測定することによって、BGMとして使用した音楽に対し、教示することなく注意を測定することができた。実験の結果、音楽の経時的な経過とともに注意が払われる照明を特定することができ、聴覚情報である音楽の認知に、視覚的情報がどのように関わっているのを明らかにすることができた。 現在は、上記2つの実験的検証を元に、聴取空間が音楽認知に与える影響を体系的に検証している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた2つの実験を行うことができた。したがって、ここで特に述べるべき事柄はない。 なお、当初の予定では実験結果に基づいて聴取空間が音楽認知に与える影響を体系的に検証することになっていた。これについては最終年度のモデル化の際に合わせて行う方がより効果的と考え、次年度に行うこととした。
|
Strategy for Future Research Activity |
特に大きな変更はなく、1)音楽認知過程における潜在記憶の役割、2)情動喚起の発生と変化時点に関する生理的な変化と自身のメタ認知との関係、3)“心地よさ”に関する視覚的情報処理と聴覚的情報処理の関係性を明らかにする。 最終年度はこれらを包括的に説明し得る計算論的認知モデルを構築し、コンピュータ上に実装してシミュレーション作業を繰り返す。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画のうち、「聴取空間が音楽認知に与える影響を体系的に検証する」という箇所を次年度に回した。このために確保してあった金額を次年度に繰り越すことになった。 モデル構築用およびシミュレーション用 PC (概算100,000) および研究旅費(残額)としての使用を計画している。
|
Research Products
(5 results)