2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24500260
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Saitama Institute of Technology |
Principal Investigator |
渡部 大志 埼玉工業大学, 工学部, 准教授 (80337609)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 耳介認証 / 3D認証 / カメラ平面外回転 |
Research Abstract |
本研究の特色は,その有用性にもかかわらず研究が進んでいない「耳介」を生体認証に用いることにある.耳介のパターンは個人により異なりかつ,指紋や虹彩より大きいため,機器に接触せず遠くからでも個人を識別できる.実際に鑑識の現場では,犯人がマスクやサングラスで顔を隠す場合など,犯罪現場画像と被疑者の耳介画像のみで個人識別を行わなくてはならないことがある.しかし,これらの画像は撮影角度が異なるのが常なので,認証にあたっては耳介の撮影角度差の影響を検討する必要がある.研究代表者は登録データが1枚しかない場合でも別姿勢のGabor Jetを推定し,これを判別分析に基づく学習機に学習させ認証を行う新手法を提案した.この研究を発展させて,推定アルゴリズムの改良によるロバスト性向上の可能性と適用限界を見出し,防犯カメラ画像による耳介認証の実用化を目指している. 交付申請書では,1,2年次に,概ね「1.推定アルゴリズムの改良によるロバスト性向上の可能性と適用限界」の研究を,3年次に概ね「2.角度変化にロバストな耳介の特徴点探索アルゴリズム」の研究を行う計画を申請している.そして1,2年次研究の「1.推定アルゴリズムの改良によるロバスト性向上の可能性と適用限界」の具体的内容として,「1-(a) 特徴点の検討」,「1-(b) 法線モデルの検討」,「1-(c) 漸近展開精度向上の検討」,「1-(d) 特徴量強調方法の検討」,「1-(e) 限界の調査」,「1-(f) 防犯カメラでの確認」の6項目を調査研究の対象として申請している.この6項目の中で1-(b) ,1-(e), 1-(f)の3項目について研究に具体的な進展があり,昨年度13件の学会発表と3件の技術報告と2件の論文にまとめ公表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書の最初の2年間の6個の研究項目のうち,3項目で具体的な進展があり研究はおおむね順調に進展していると考えられる.以下各項目の進展を具体的に記載する. 1-(b) 法線モデルの検討:被写体のカメラ平面内回転の再現は容易であるが,奥行きのある被写体のカメラ平面外回転の再現は容易ではない. [1]では,各特徴点の周辺を接平面で近似し奥行きをなくし,近似した接平面を回転させるアイデアで,局所的にGabor特徴量の平面外回転の推定を試みている.近似接平面または法線の設定は視点の異なる画像が2枚以上あれば計算できるが,画像が1枚しかない人物の法線は2枚以上ある他の人物(達)から求めた平均の法線(法線モデル)で代用する必要がある.この法線モデルは似た耳介同士で求めたほうが別姿勢のデータの推定精度向上に役立つ.昨年度は法科学的な分類[2]ごとに法線モデルを作成することで精度向上ができるか検討した.対耳輪の形状の分類に対応する3モデル化,舟状渦の形状の分類に対応する2モデル化で,推定精度の向上が望めることがわかった. 1-(e) 限界の調査:研究代表者らの手法の適用判断基準を調査したところ,船状窩が十分に観察される角度と 解像度でない場合,極端に認証精度が下がることがわかった. 1-(f)防犯カメラでの確認:汎用防犯カメラの画像は広範囲を撮影するため魚眼レンズ効果がかかり,これが照合の妨げとなる.また,実際の現場では超解像処理による鮮明化も行われるが,鮮明化画像が実物を正確に表現するとは限らない.昨年度はこれらの画像を擬似的に作成し研究代表者らの手法の適用限界を調べた.また,法線モデル作成の際に劣化画像を利用することで精度が改善できることも示した. [1] 渡部他,映情学誌,65,7,1016-1023,(2011) [2] 森好, 他,法科学技術, 12(1), 27-34, (2007)
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き,申請書中の未了の項目だけでなく,進展の見られた項目も含め,推定アルゴリズム改良の可能性と限界を調査する. 1-(a) 特徴点の検討:姿勢変化後のGabor特徴量を推定するには特徴点ごとの接平面が必要である.しかし,研究代表者の先行研究から姿勢変化がない場合に識別精度の高かった特徴点周辺は,凹凸が急峻なため接平面が正確には定まらないという難点を持つ.このトレードオフを考え接平面を定めるのに適した特徴点を明らかにする. 1-(b) 法線モデルの検討:昨年度は形態学的分類に対応するモデル化で精度向上の可能性を示したが,今年度は以下3つの方策でさらなる精度改善を試みる.①因子分析やクラスター分析などで複数のモデルを用意し認証率の向上 を図る.②モデル作成のための耳介画像の数を増やす.③顔の角度で代用している耳介の角度を3次元計測から正確に求めその角度で正規化することで法線モデルの精度向上を図る. 1-(c) 漸近展開精度向上の検討:研究代表者らはGabor jetが接平面同様に特徴点周辺に局所化されていることに着目し,回転後のGabor jetの成分を回転前の成分で漸近展開し,異なる姿勢のGabor jetとの間の1次対応関係を求め別姿勢の特徴量を推定している.漸近展開の打切り誤差を検討し波長や方向の組み合わせを再検討し精度向上を図る. 1-(d) 特徴量強調方法の検討:研究代表者らは多数の判別分析の派生アルゴリズムの利点を組み合わせ,合計288種類の判別分析を一度に行うプログラムを作成した.このプログラムで,角度,解像度,収差変化への頑健性の向上を試みる. 1-(f)防犯カメラでの確認:前年度は解像度低下,超解像処理,歪曲収差の個人識別に与える影響の検討を,擬似的に作成した防犯カメラ画像で行った.本年度は実際に多数の防犯カメラ画像を撮影する方策で実用性向上の検討を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
以下の4費目を計上する計画である:①モデル作成のための撮影システム構築費用の一部,②防犯カメラ画像取得システムのための費用の一部,③研究補助者への謝金,④学会参加費,旅費,論文出版費.各費目について説明する. ① モデル作成のための撮影システム構築費用の一部:今後の研究の推進方策の「1-(b) 法線モデルの検討」で,法線モデル作成のため耳介画像の数を増やす方策について触れた.複数のグループにそれぞれ法線モデルを作成する際に,各グループのデータ数が多いほうが法線ベクトルモデルが安定すると考えられるからである.現在HOIP databaseの300人を利用したモデルを利用しているが,これをさらに安定させる為,今年度はさらに多くのデータを撮影する.そのための撮影システム構築費用の一部を計上する. ② 防犯カメラ画像取得システムのための費用の一部:「1-(f) 防犯カメラでの確認」の項で,実際に多数の防犯カメラ画像を撮影する方策について触れた.防犯カメラは通常上に固定されており,カメラからの距離に連動して上からの撮影角が変わる(近いと角度は深く,遠いと浅い).つまり撮影角に連動して被写体の大きさや魚眼レンズ効果による歪みも変わる.そこで研究代表者らがこれまで利用してきたXM2VTSや HOIPの画像には無かったそのような効果の影響を試すため,複数の防犯カメラを一列,等間隔,同じ向きに天井に固定し,複数の角度・距離からの画像を一度に取得するシステムを構築する.そのための費用の一部を計上する. ③ 撮影後の多数の画像のGround Truth Data作成は大変骨の折れる作業である.これら作業のアルバイトへの謝金を計上する. ④ 国内外の学会やワークショップや,IEEE の会議等で発表を行う際の旅費,学会参加費, 学術雑誌の掲載費を計上する.
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