2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24500260
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Research Institution | Saitama Institute of Technology |
Principal Investigator |
渡部 大志 埼玉工業大学, 工学部, 准教授 (80337609)
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Keywords | 耳介認証 / 3D認証 / カメラ平面外回転 |
Research Abstract |
本研究の特色は,その有用性にもかかわらず研究が進んでいない「耳介」を生体認証に用いることにある.実際の鑑識現場では,犯罪現場画像と被疑者の耳介画像のみで個人識別を行わなくてはならないことがある.そして,これらの画像は撮影角度が異なるのが常なので,認証にあたっては耳介の撮影角度差の影響を検討する必要がある.研究代表者は登録データが1枚しかない場合でも別姿勢のGabor特徴を推定し,これを判別分析に基づく学習機に学習させ認証を行う新手法を提案した(渡部他,映情学誌,65,7,1016-1023,(2011)).この研究を発展させて,推定アルゴリズムの改良によるロバスト性向上の可能性と限界を見出し,防犯カメラ画像による耳介認証の実用化を目指している. 交付申請書では,1,2年次に概ね「1.推定アルゴリズムの改良によるロバスト性向上の可能性と適用限界」の研究を,3年次に概ね「2.角度変化にロバストな耳介の特徴点探索アルゴリズム」の研究を行う計画を申請している.そして1,2年次研究の「1.推定アルゴリズムの改良によるロバスト性向上の可能性と適用限界」の具体的内容として,「1-(a) 特徴点の検討」,「1-(b) 法線モデルの検討」,「1-(c) 漸近展開精度向上の検討」,「1-(d) 特徴量強調方法の検討」,「1-(e) 限界の調査」,「1-(f) 防犯カメラでの確認」の6項目を申請している.昨年度の研究実施状況報告書では,次年度に研究することとした1-(a), 1-(c), 1-(d)の3項目の他,初年度に進展があり更に研究の発展が見込まれた1-(b), 1-(f)の2項目を加えた5項目を調査する旨申請した.この5項目のうち4項目の研究について具体的な進展があり,昨年度は9件の国内学会発表と3件の国際会議論文(特別講演を1件含む)を公表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書で最初の2年間に研究する旨記載した6項目のうち,初年度に進展のあった2項目を含む4項目に進展があり,研究はおおむね順調に進展していると考えられる.以下各項目の進展を具体的に記載する. 1-(b)法線モデルの検討:顔の正面に対する耳介の張り出し角度は個人毎に異なる.昨年度は,この違いを3次元計測によりそろえた上で法線のモデリングをすることで精度向上が望めることを明らかにした.またモデル安定化のため多人数の多方向耳介画像を効率的に撮影するシステムの構築をした. 1-(c)漸近展開精度の検討:研究代表者らはGabor特徴が接平面同様に特徴点周辺に局所化されていることに着目し,姿勢の異なる画像のGabor変換の積分核を姿勢変化前の画像のGabor変換の積分核で漸近展開し積分の線形性を利用することで,異なる姿勢のGabor特徴間の1次対応関係を求め別姿勢の特徴量を推定している.本手法と,その類似手法となる重回帰に基づく1次対応関係の精度を比較したところ,モデル作成に必要なサンプル数がGabor特徴の成分の個数より少ない場合は研究代表者らの手法が優位であった. 1-(d)特徴量強調方法の検討:撮影角度変化後のGabor特徴を推定し判別分析に入れて学習させることで,未知な姿勢に対応していた.そして判別分析における小サンプル問題回避のため主成分分析(PCA)を判別分析の前に施していたが,PCAをKernel PCA(KPCA)に変更し,特徴量に非線形変換を施すことで頑健性が向上することを確認した. 1-(f)防犯カメラでの確認:汎用防犯カメラでは広角レンズが利用されており,その結果生じる樽型の歪曲収差が照合の妨げとなる.一昨年度は擬似的に作成した画像で行った実験を実際に撮影した画像で行うため,昨年度は多人数の様々な収差の耳介画像を効率的に撮影するシステムの構築をした.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き,申請書中の未了の項目だけでなく進展の見られた項目も含め,別姿勢推定精度,画像の収差と解像度の補正精度,特徴点検出の精度向上の可能性を探る. 1-(b)法線モデルの検討:以下4つの方策でさらなる精度改善を試みる.①種々のクラスタリング手法で複数のグループに分類し,複数の法線モデルを用意し認証率の向上を図る.②各グループのデータ数が多いほど法線ベクトルモデルを安定化できると考えられる.モデル作成に利用する耳介画像の数を,昨年度作成した多方向耳介画像撮影システムで増やす.③法線方向は現在全探索で求めているためモデル作成に時間がかかる.非線形最適化の手法を利用してモデル作成時間を改善し実験規模の拡大を図る.④顔認証で利用されている別姿勢特徴量推定法のモデリング手法が耳介へ適用可能か否かを調査し研究代表者の手法と比較検討する.例えばMorphable modelや重回帰や特異値分解による別撮影角度の特徴量推定法の適用可能性を検討する.必要な主成分は耳介ではいくつ必要か,外れ値を取り扱う重み関数は何が良いか調べる. 1-(f)防犯カメラでの確認:汎用防犯カメラでは広角レンズが利用されており,その結果生じる樽型の歪曲収差が照合の妨げとなる.初年度は画像処理で作成した模擬画像でその影響の検討を行った.昨年度は多数の防犯カメラ画像を実際に撮影できる耳介画像撮影システムを作った.本年度はこのシステムで防犯カメラ画像を撮影し樽型の歪曲収差の影響を検討する. 2-(a)特徴点抽出の改良:耳介の特徴点探索は特徴点の位置関係に個人差が大きく容易でない.申請代表者らは特徴点の位置関係を主成分分析し,個人差が大きく近似効率の高い方から探索することで,効率的に特徴点を探索するアルゴリズムの開発をしている.特徴点の3次元的な計測を利用することで手法のさらなる改善を試みる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物価の変化,研究協力者の想定した労働時間と実労働時間との差に伴う謝金の変化,学会発表の予定数とアクセプト件数との差に伴う学会参加費の変化等が理由で次年度使用額が若干生じたが,想定の範囲内である. 以下3費目を計上する:①耳介画像提供者への謝礼②研究補助者への謝金③学会参加費,旅費,論文出版費.各費目の必要性について説明する. ①今後の研究の推進方策の1-(b)で,法線モデル安定化のため耳介画像数を増やす旨述べた.また,1-(f)で防犯カメラ画像を撮影して実験を行う旨述べた.昨年度構築した耳介画像撮影システムではモデル作成用画像と防犯カメラ画像を一度に撮影できるのでこれを使用する予定だが,撮影協力者を年齢や性別に偏りなく多く集めるには撮影の協力を呼びかける広告や記念品の提供などが必要である.そのための費用を計上する.②撮影後の多数の画像からGround Truth Dataを作成することは大変骨の折れる作業である.この作業のアルバイト謝金を計上する.③研究成果を社会に発信するため,IEEE等の学会や学術雑誌で発表を行う.学会参加費, 旅費,学術雑誌の掲載費を計上する.
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