2012 Fiscal Year Research-status Report
高度技術環境における共生社会の構築可能性に関する感性社会学的研究
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24500261
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
土屋 淳二 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (80287937)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 感性 / 感性社会学 / 国際情報交換 / モード / ファッション |
Research Abstract |
本研究は,高度技術環境にみる人間観や身体観の価値変容の実態を実証的に把握し,人間・環境・技術が織りなす「持続的共生社会」のあり方とその構築可能性について,感性社会学的視座から究明する.経済至上主義や物質主義に基礎をおく近代工業化の価値理念や環境負荷型生産方式がもたらす過剰社会から,精神的豊かさと相互信頼を基礎とするポスト近代的価値や環境配慮型・対話型生産方式による共生社会へ,と指向する今日のマクロ的社会趨勢を「感性」概念による近代価値のパラダイム転換として理論的に省察する.また実証研究として,「高度感性社会」(イタリアを調査国として選定)での事例調査を実施し,高度技術環境の感性化が多元的価値を前提とする共生社会の構築に果たす社会的機能と意義について社会学的に考察する.先端技術と人間との関係性にみる<感性>と身体問題の理論的考察においては,「ロボット化する人間(身体)」と「人間化するロボット(機械)」との相互浸透にみる<ポストヒューマン>概念を人間の感覚・認識の観点から考察した.先端技術の身体への応用を促進/阻害する社会要因を摘出し,ヒューマンインターフェースとしての<感性>を社会装置として導入することにより,ミクロ‐マクロ・レヴェルでの社会的相互作用プロセスをつうじて人間のあり方が環境や技術(機械)との関係性のなかで相対化される局面を明らかにした.理論・方法論研究では,社会学領域での身体論・自我論を中心に先行研究の渉猟と理論モデルの再検討をつうじて,本研究課題の感性社会学的アプローチの可能性と有効性について検討を試みた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題全体における理論的考察については,比較対象国(イタリア)での感性部門領域での基礎資料の収集が進展し,現地共同研究者チームと国際シンポジウム・学術会議・講演会を共催するなど一定の成果が得られ,また社会貢献として研究知見の社会への発信がある程度達成された.感性産業部門の対する海外現地調査については,現地共同研究機関の財政的事情により一部延期される事態が発生したが,現在,ヒアリング調査企画を固めつつあり,次年度において実施する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの社会学における文化研究に<感性>工学の理論的視点を導入し,その射程から共生社会の構築プログラムに関するマクロ社会論の理論化(社会倫理モデル)を目指す.理論・方法論研究については,前年度からの継続課題として,以下の論点を設定することで「感性社会化」の持続的共生社会づくりへの影響・効果に関するマクロ社会的理論のモデル化を試みる.具体的な研究課題としては,(1)高度技術環境における「感性文化」の社会的浸透プロセス,(2)<感性>を媒介とするパートナーシップ形成と共生社会の構築プロセス,(3)企業の社会貢献・社会的責任行動(CSR)と消費者行動に果たす<感性>の社会倫理性,(4)補完調査の実施・分析(調査実施にともなう対象者の拡充など適宜ヒアリング調査の補足・追加を行う).また,年度内での研究成果の公表・評価として,調査報告と論文作成,海外連携研究者と共同での学術書刊行,国際会議の開催を予定している.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究推進方策にある課題への取り組みとして,海外出張(現地調査および国際会議出席,共同研究企画会議等)を2回実施し,また資料収集のための国内出張を3回(国内研究機関,感性部門の民間企業の取組み調査等)実施するための諸経費と出張旅費を支出する.また,成果報告に伴う資料・文献の収集,収集されたデータおよび研究知見の整理保管に必要な機材(PC・周辺機器,ソフト類)を必要最低限購入する予定である.
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[Presentation] Technology and Senseware
Author(s)
Tsuchiya, Junji
Organizer
Giornata di Studi-The Rising the Web: Web2.0, Consumi e Moda
Place of Presentation
Alma Mater Studiorum-Universita’ di Bologna, Facolta’ di Lettere e Filosofia
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