2013 Fiscal Year Research-status Report
高度技術環境における共生社会の構築可能性に関する感性社会学的研究
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24500261
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
土屋 淳二 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (80287937)
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Keywords | 感性社会学 / 国際情報交換(イタリア) / 倫理的消費 / 社会的責任 / ブランディング / スローライフ / 産業集積地 / グローカル |
Research Abstract |
本研究は,高度技術環境が社会的価値の変容をもたらすプロセスを実証的に検証し,人間・環境・技術が織りなす「持続可能な共生社会」のあり方とその構築可能性について,感性社会学的視座から究明するものである.研究過程においては,(1)価値変容プロセスの社会文化的コンテクスト(マクロ的側面)の把捉として,近代化過程の要請する合理主義および効率主義を促進要因とする応用化学技術の高度化に対する価値理念の共有化と社会的浸透,(2)それに依拠する環境負荷型生産方式がもたらした「過剰社会」の抱える問題群を明らかにし,そのようなコンテクストにおいて,(3)理念的な離脱が新しい価値観と社会倫理の形成へと発展していくこと,(4)後期近代における精神的豊かさと相互信頼を基礎とするポスト近代的価値や環境配慮型・対話型生産方式による共生社会へと指向する今日のマクロ的社会趨勢がグローバル化のなかで社会生活,経済市場ならびに産業構造へと波及していくこと,を明らかにする.13年度の研究課題として,とくに感性産業の範例的事例として繊維アパレル部門に焦点を向け,①そこでのマクロ的な経済情勢と産業構造の変動,②生産方式の転換と商品開発理念の革新プロセス,③消費者倫理における価値観の変容,④業界団体や行政における社会的企業活動に対する振興支援政策のあり方,⑤生産‐消費ネクサス領域における市場形態の機能的変化と⑥企業の社会的責任と企業倫理の問題等に関する分析を行い,これら複合的かつ重層的な価値変容プロセスのメカニズムを「感性」概念による近代価値のパラダイム転換として理論的に整理した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題全体における理論的考察については,前半部分の理論的考察が概ね終了し,後半部分の実証研究での作業のうち調査研究のパイロット的調査が終了した段階である.本研究では,海外比較事例を調査することが要請されており,そのうち海外調査地(イタリア)での現地調査にあたり,調査協力者との連携体制は構築され,共同研究者チームとの国際シンポジウム・学術会議・講演会等は,すでに数回実施されている.詳細な実査作業(本調査)は次年度に実施予定である.これまでの成果については,前記にある成果報告の機会によって研究知見の社会への発信がある程度達成された.感性産業部門の対する海外現地調査については,現地共同研究機関の財政的事情により一部延期される事態が発生し,若干の遅滞がみられたものの,本年度の研究時点においてヒアリング調査企画は決定され,そのうち数地区での調査はすでに実施された.
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Strategy for Future Research Activity |
これまで実施した研究作業の全体的な総括と海外現地調査の継続を展開することに今後の研究作業の時間を集中させる.とくに社会学における文化研究に<感性>工学の理論的視点を導入し,その射程から共生社会の構築プログラムに関するマクロ社会論の理論化(社会倫理モデル)を目指す.理論・方法論研究については,前年度からの継続課題として,以下の論点を設定することで「感性社会化」の持続的共生社会づくりへの影響・効果に関するマクロ社会的理論のモデル化を試みる.具体的な研究課題としては,(1)高度技術環境における「感性文化」の社会的浸透プロセス,(2)<感性>を媒介とするパートナーシップ形成と共生社会の構築プロセス,(3)企業の社会貢献・社会的責任行動(CSR)と消費者行動に果たす<感性>の社会倫理性,(4)補完調査の実施・分析(調査実施にともなう対象者の拡充など適宜ヒアリング調査の補足・追加を行う).また,年度内での研究成果の公表・評価として,調査報告と論文作成,海外連携研究者と共同での学術書刊行,国際会議の開催を予定している.研究推進方策にある課題への取り組みとして,海外出張(現地調査および国際会議出席,共同研究企画会議等)を資金的に可能な限り3回実施し,また資料収集のための国内出張を数回(国内研究機関,感性部門の民間企業の取組み調査等)実施する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外現地調査における研究協力者の都合および聞き取り調査対象者の確定作業に時間を要し,調査研究スケジュールの再調査が必要となったため,次年度に本調査の一部を繰り越す必要が生じた.とくに現地調査対象国(イタリア)においては,日本と現地研究機関との暦の差異もあるため,調査実施期間の確定と相互調整に予想外の時間を要する場合が多い.さらに,当該年度でのパイロット調査結果によって,現地調査対象者の選定の組み換えを行う必要が生じたため. 海外現地調査を2回実施する.また研究知見の成果発表として,海外出張を1回,国内出張を2回予定している.印刷媒体の成果報告として,調査資料の整理翻訳,論文作成,刊行物のための翻訳料を主な使途とする.
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Research Products
(4 results)