2014 Fiscal Year Annual Research Report
高度技術環境における共生社会の構築可能性に関する感性社会学的研究
Project/Area Number |
24500261
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
土屋 淳二 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (80287937)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 社会学 / 感性 / 感性社会学 / イタリア / 国際情報交換(イタリア) |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,高度技術環境にみる現代社会の価値変容のあり方を実証的に把握し,人間・環境・技術が織りなす「持続的共生社会」のあり方とその構築可能性について,感性社会学的視座から究明する.経済至上主義や物質主義に基礎をおく近代工業化の価値理念や環境負荷型生産方式がもたらす過剰社会から,精神的豊かさと相互信頼を基礎とするポスト近代的価値や環境配慮型・対話型生産方式による共生社会へと指向する今日のマクロ的社会趨勢を「感性」概念による近代価値のパラダイム転換として理論的に考察するものである.また実証研究として「高感性社会」のモデルを国際比較事例をつうじて明らかにするために,比較対照としてイタリア国を調査対象地として選定し,ヒアリングを中心とした事例調査を実施した.そこにおいて日本との社会文化的状況の差異にみられる高度技術の発達環境の異なるコンテクストにおいて,感性社会化が多元的価値を前提とする共生社会の構築に果たす社会的機能と意義についてグローバル化における社会の「スロー化」モデルを理論的に整理した.日本の事例調査においては,今日の先端技術が「感性」商品の開発と応用にとどまらず,「精神的豊かさ」を実現する社会環境の整備と社会問題への取り組みとに重要な影響をもたらすこと,そこにおいて「共生」思想を背景とする宗教的精神性が固有のマーケティング戦略や経営マネジメント技術を支え,80年代までの経営環境を支えてきた旧来型の「日本的経営」方式とは異なる新しい産業発展モデルを形成し続けてきた背景が明らかにされた.高度技術の社会的本質が,市場経済と新しい消費態度に顕著にみられる社会倫理の実践的要請に対して,企業の社会貢献・社会的責任(CSR)と消費者行動の倫理性とを媒介に,共生社会と持続可能性の実現を目指すグローバル社会での新しいパートナーシップのあり方を提起する点に求められることが明らかとなった.
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Research Products
(13 results)