2012 Fiscal Year Research-status Report
ヘテロ性を考慮した心臓洞房結節モデルの特異摂動・分岐解析と同期律動創発機構の解明
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24500274
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
土居 伸二 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50217600)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 心臓 / ペースメーカ / 振動子結合系 / 同期リズム / 特異摂動 / 分岐 |
Research Abstract |
本研究では,心筋洞房結節(ペースメーカ)細胞のHodgkin-Huxley型数理モデルを用いて洞房結節全体のモデルを構築し,結合振動子集団としての洞房結節におけるリズム調節機構や(洞性)不整脈の原因を解明し新たな治療方策を導く知見を得ることを目指している.数千個の細胞から成る洞房結節に存在する細胞のヘテロ性(中心細胞や周辺細胞を初めとして,固有周期やチャネル密度などの性質が相当異なる細胞が集まっている)を考慮し,細胞集団におけるリズム(律動)調節機構を特異なリズムや同期現象の創発という観点から,特異摂動論や分岐理論など非線形力学系の諸理論に基づいて解析を行う,ことを目的としている. 本研究目的達成のため,初年度である当該年度では,単一振動子モデルとして比較的単純な振動子モデルを用い,その結合系モデルを構築した.この結合系においては,各振動子の固有周期が異なっており,心筋洞房結節細胞群のヘテロ生を抽象化したものとなっている.この結合系では,単一振動子の固有周期とは相当異なる同期リズムが創発する.その原因を解明するため,種々の条件下でのシミュレーション及び平衡点の安定解析,さらに分岐解析を行い,リズム創発のダイナミクスを詳しく解析した. 上記研究と並行して,単一振動子の特異摂動系としての性質がリズム形成に及ぼす影響を調べるため,特にHopf分岐近傍に生じるアヒル解の高精度シミュレーションと漸近解析を行った. 今後は,以上の研究を踏まえて,実際の心筋洞房結節により近い系の解析へと発展させる予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・「周辺細胞と中心細胞から成る洞房結節のヘテロ細胞集団モデルを構築する(初年度は,比較的少数個から成る結合系を構築する)」 少数ではあるが,結合系の構築は完成しているので,本項目に関しては,目的は達成されている. ・「結合強度だけでなく,イオンチャネルコンダクタンスなど,可能な限り多くのパラメータに関して,詳細な分岐解析を徹底的に行う」 詳細な分岐解析もおおむね完了しているので,本項目もおおむね達成されている. ・「特に,洞房結節内に存在するヘテロ性(中心細胞・周辺細胞の間の諸特性の違い)が,結合系全体の同期リズムにどのような影響を及ぼすかを明らかにする」 本項目に関しては,現在検討中である. 以上のように,「おおむね順調に進展している」と結論できる.
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Strategy for Future Research Activity |
・前年度の結果を踏まえて,多数の細胞集団から成る洞房結節の大規模モデル化を行う.この際,最新の実験結果に関する文献調査を踏まえた上,より詳細で生理学的なモデリングを行う.また,中心細胞と周辺細胞の違いだけではなく,固有周期,活動電位波形,イオンチャネル密度,ギャップ結合形態等々の異型性など,洞房結節のヘテロ性を十分考慮する. ・初年度に用いていない生理学的パラメータに関して,引き続き,詳細な分岐解析を行う.この際,本研究で扱う洞房結節モデルは,大規模システムであるので,細胞数が増大すると,そのままでは分岐解析が行えない可能性がある.その場合,遅い変数を新たなパラメータと考え,「遅い変数をフリーズした」系の分岐解析を行った後,フリーズした変数をゆっくり変化する変数に戻し,もとの特異摂動系の分岐図を完成させる等々の特異摂動理論に立脚した工夫を行う. ・「洞房結節内に存在するヘテロ性(中心細胞・周辺細胞の間の諸特性の違い)が,結合系全体の同期リズムにどのような影響を及ぼすか」という問題に関して,シミュレーションや分岐解析・特異摂動解析結果を踏まえて,踏み込んだ考察を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述の研究成果発表のための数回・数人の出張旅費,ならびに,シミュレーションのための計算機関連機器・ソフトウェアの購入,並びに情報収集のための関連書籍の購入などを行う.
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