2013 Fiscal Year Research-status Report
ヘテロ性を考慮した心臓洞房結節モデルの特異摂動・分岐解析と同期律動創発機構の解明
Project/Area Number |
24500274
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
土居 伸二 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50217600)
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Keywords | 心臓 / ペースメーカ / 振動子結合系 / 同期リズム / 特異摂動系 / 分岐現象 / ヒト心室筋細胞モデル |
Research Abstract |
本研究では,心筋洞房結節(ペースメーカ)細胞のHodgkin-Huxley型数理モデルを用いて洞房結節全体のモデルを構築し,結合振動子集団としての洞房結節におけるリズム調節機構や(洞性)不整脈の原因を解明し新たな治療方策を導く知見を得ることを目指している.数千個の細胞から成る洞房結節に存在する細胞のヘテロ性(中心細胞や周辺細胞を初めとして,固有周期やチャネル密度などの性質が相当異なる細胞が集まっている)を考慮し,細胞集団におけるリズム(律動)調節機構を特異なリズムや同期現象の創発という観点から,特異摂動論や分岐理論など非線形力学系の諸理論に基づいて解析を行うことを目的としている. 本研究目的達成のため初年度では,単一振動子モデルとして比較的単純な振動子モデルを用い,その結合系モデルを構築した.この結合系では,単一振動子の固有周期とは相当異なる同期リズムが創発する.このリズム創発のダイナミクスを詳しく解析した.並行して,単一振動子の特異摂動系としての性質がリズム形成に及ぼす影響を調べるため,Hopf分岐近傍に生じるアヒル解の高精度シミュレーションと漸近解析を行った. 今年度は,上記の研究を発展させ,特異摂動系に発生するアヒル解のシミュレーションにおいて,偽のカオス的リズム現象を発生するダイナミクスを詳細に解析し,安定な枝における変数の精度不足が偽カオス解を発生するという予想外の結果を得た.さらに,雑音が振動子結合系の同期現象や同期リズムに及ぼす影響の解析も行った.これらの解析を踏まえて,Hodgkin-Huxley型の詳細な心筋細胞モデルの解析を行った.ヒトの心室筋細胞モデルである縮約ten Tusscher-Noble-Noble-Panfilovモデルを用いて,詳細な分岐解析を行った.その結果,(通常条件下では振動しない)心室筋が振動する(ペースメーカとして振る舞う)ためのイオンチャネルコンダクタンスに関する条件を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
心臓洞房結節をモデル化した振動子結合系における種々の同期現象,同期リズム形成のダイナミクス,および特異摂動系(心筋細胞の活動電位発生も,この例である)における振動現象に関する種々の結果を得た.さらに,より生理学的に詳細なモデルとして,ヒトの心室筋細胞モデルである縮約ten Tusscher-Noble-Noble-Panfilovモデルの分岐解析も行えるようになった.最終年度に向けての準備として,おおむね順調に進んでいると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
心臓洞房結節モデルとして,より詳細なHodgkin-Huxley型モデル結合系を用いて,そのダイナミクスを詳細に解析することで,本研究目的である「結合振動子集団としての洞房結節におけるリズム調節機構や(洞性)不整脈の原因を解明し,新たな治療方策を導く知見を得る」を達成する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現有設備で,なんとか行うことができたので,大規模シミュレーション用の備品(計算機)の購入が研究期間前半では必要なかったことが主な理由である. 今年度は,大規模なシミュレーションが必要になるので,そのための設備(計算機)を購入する.さらに,学会・論文発表も増える予定であるので,それらにかかる費用に当てる.
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