2014 Fiscal Year Annual Research Report
東日本大震災におけるメディアとサバルタンに関する研究
Project/Area Number |
24500304
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
坂田 邦子 東北大学, 情報科学研究科, 講師 (90376608)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | メディア / サバルタン / 東日本大震災 |
Outline of Annual Research Achievements |
東日本大震災から4年が経過し、理論的、実証的および実践的研究を経て、当初の問題意識である「社会的弱者」としてのサバルタン研究から、「言説的弱者」としてのサバルタンへと概念を転回させる必要があることが明らかになった。とりわけ、最終年度に行った実践研究(ワークショップ等)の分析からは、サバルタンの語りが語られる際に、様々な困難(具体的には、他者との関係性や文化的・言説的背景、および歴史的背景など)をともなうだけでなく、語りの伝達についても受け手である他者との関係性において生じる「負い目」や「傍観」などのコミュニケーションにおける壁があることがあらためて明らかになった。 ただし、一方で、それらを乗り越えるための手段としてのメディアの役割についても明らかになっている。サバルタンの語り出しにおける「第三者的メディア」(他者を前提としないモノローグから始まる語り出しを誘発するメディア)の役割、および、受け手となる他者とサバルタンとの対話を可能にする〈あいだ〉あるいは〈すきま〉を有するメディア(これはメタファであるが、受け手が送り手のメッセージを受け取る際に、一方的に解釈するのではなく、送り手と受け手の対話を誘発する仕掛けを有するメディアのこと)、そしてこれらの役割を有し、その〈あいだ〉を自由に行き来する「第3のメディア」(これは人間そのものでもあり、他者との関係性を突き崩し新たな関係性を築くことを可能にするデザインされたメディアあるいはそのメディアを創り出すメタレベルのメディア)の可能性があることが明らかになった。今後は、この可能性を証明するための実践的な研究を引き続き行っていきたいと考えている。
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Research Products
(2 results)