2013 Fiscal Year Research-status Report
福島原発事故における自治体の情報伝達問題に関する研究
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24500305
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
佐々木 康文 福島大学, 行政政策学類, 准教授 (30323190)
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Keywords | 福島原発事故 / 災害情報 / 避難自治体 / 情報伝達 / 風評被害 |
Research Abstract |
平成25年度は、①原発事故の状況や避難に関する情報が原発周辺の自治体とその住民にいかに伝達されたのかという問題とそこから見えてくる今後の課題、②福島県産品などに生じているとされる「風評被害」の実態等について調査と分析を行った。 ①については、広野町、南相馬市、田村市に関して調査と分析を行った。具体的には、平成24年度末に行った聞き取り調査の結果の分析、公開されている資料や報道などの分析に加え、不明な点などに関する追加調査を行い、そこから見えてくる問題点などを探った。詳細については、次年度中に公表する予定の論文の中で論じたいと思うが、南相馬市や田村市のように、かつてのEPZ(重点地域)に入っていなかった自治体の災害担当部局には、避難指示や屋内退避指示に関してはある程度届いていたものの、原発事故そのものに関する情報や説明は、十分に届いたとは言えない部分があるなど、想定外の範囲にまで被害が及んだ場合の対応に課題があったことなどが明らかになった。 ②については、福島県の果樹農家、有機農業を行っている農園、酒造業者などに対する聞き取り調査や、公開されている資料および報道などの分析を行った。調査の件数がまだ少ないため、今後追加の調査を行っていく必要があるが、同じ業種の中でも風評被害を受けやすいものもあれば、受けにくいものもあり、業種全体をひとまとめにして被害をとらえるだけではなく、それぞれの業者や農家などの特徴や置かれている状況などを個別に見ていかなければ、風評被害と言われる現象の本質にはたどりつけない可能性が高いことが分かった。今年度の調査と分析から得られた知見をいかして、次年度に追加調査を行いたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね計画通りに調査と分析を行ったと思われるが、調査の件数などはもう少し増やすことができた可能性がある。またEPZ外の避難自治体に対する情報伝達の実態に関しては、今年度中に論文を完成させることができなかった。次年度の課題としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
南相馬市において流布した原発事故に関わる様々なうわさに関して、南相馬市の住民を対象にした新たな調査の実施を検討中である。また、風評被害の調査と分析に関して、今年度に得られた基本的な認識をベースにしながら、追加の調査を行い、風評被害のメカニズムや本質などを明らかにしていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度中に発行された新聞の縮刷版を購入する予定であったが、予算が少し足りなかったため、平成25年度中に執行できなかった。 次年度の研究費をプラスしてこの縮刷版を購入する予定である。
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