2013 Fiscal Year Research-status Report
人間のマルチモーダル情報処理能力の特性を活かした誤操作防止システムの研究
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24500311
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
橋本 文彦 大阪市立大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (30275234)
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Keywords | マルチモーダル知覚 / 人間の情報処理 / 誤操作防止 / 嗅覚 / 視覚 / 聴覚 |
Research Abstract |
平成25年度にはまず、昨年度に行った被験者実験の結果に対して、詳細な分析を行った上で、今年度開催された国際学会(European Congress of Visual Perception)にて発表を行った。この実験は、視覚・聴覚・嗅覚という三つの刺激を高速連続提示した場合に、どの感覚からの刺激が優先して記憶され、どの感覚からの刺激は見落とされやすいのかを調べたものである。 次に、昨年度の実験装置では、一度の実験で取り扱える嗅覚刺激(=香り)が一種類しか無かったので、嗅覚刺激提示装置を改良し、PCからのコントロールによって複数種類の香り(今回の実験では4種類を用いた)を提示することが出来るようにした。 また、非常に短い時間単位で制御できる触覚刺激提示装置を制作し、視覚刺激や嗅覚刺激と同時に提示できるようにした。これらの措置では、時間制御をより厳密(10msec以下の精度)に行うために必要な精度を確保した。(この精度が確保されていることを確認するために、嗅覚刺激提示と視覚刺激提示の時間を測定するための装置も制作した)。 今年度の被験者実験では、ある視覚刺激と、ある嗅覚刺激とをリンクさせて記憶させ、その後に簡単な計算課題を行った上で、視覚刺激と嗅覚刺激の想起を行った場合に、記憶時に両者がリンクしていた場合とそうでない場合とで、想起成績に差が出るか否かを調べた。また同時に、特定の視覚刺激や嗅覚刺激が、脳の高次機能を活性化・あるいは不活性化することで計算課題の成績に影響が出るか否かを調べた。実験の結果、視覚刺激と嗅覚刺激のリンケージの有無は、確かに想起の成績(=正確さ)に影響を与えることが示された。一方、これらの感覚が計算課題に与える影響については、現在詳細な検討を行っているところである。この成果は、平成26年度に成果論文としてまとめる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書の研究計画で述べた、嗅覚刺激提示装置と、触覚刺激提示装置は、ほぼ完成している。嗅覚刺激提示装置はすでに、精度の検証も終えて、視覚とのクロスモーダル実験に使用し、その成果を国際学会で発表した。触覚刺激提示装置は、複数の研究協力者も加えて、精度と実際の使い勝手を検証中である。 これらの装置を用いた実験は、これまでに合計約100名の被験者を用いて行われており、異種の感覚刺激を与えた場合の記憶や計算の正確さ・速さなどが測定された。 研究実績の概要でも示したとおり、異種の感覚刺激にリンケージを与えることが、正確さや速さに影響を与えることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験結果(もちろん、先行研究も含めて)から、複数の感覚知覚を用いることが、人間の注意・記憶、さらには計算等の高次機能にまで影響を与えることが明らかとなってきている。本研究は今後、この結果を、システマティックに解釈した上で、その特徴を持たせた情報の入力および処理装置を人間が用いることで、確かに従来の方法よりも正確・安定・迅速に行えることを示す必要がある。 そのために、次年度は、人間への典型的な情報提示および入力装置に、複数感覚知覚を利用する装置を付加して、本研究の成果を検証する被験者実験を行う。
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