2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24500349
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
船渡川 伊久子 帝京大学, 医学部, 講師 (80407931)
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Keywords | 喫煙 / 喫煙開始年齢 / 肺癌 / 繰り返し横断調査 / 出生コホート |
Research Abstract |
喫煙の害にも関わらず、世界ではなお13億人が喫煙し、各国における女性喫煙の拡大や喫煙開始の低年齢化は深刻な問題である。長期喫煙や若年期喫煙の害は以前より指摘され、喫煙開始年齢は重要な指標だが、各国の長期推移の報告は少ない。 本年度は日本の喫煙開始年齢と喫煙率、肺癌死亡率の長期推移を出生コホートに着目して示した論文がWHOのBulletinに掲載された。また、英国で最初に多くが喫煙した女性コホートは1940年頃の生まれではなく1920年代中頃の生まれであり、肺癌死亡率も高いことを指摘したレターがLancetに掲載された。これは昨年度BMJ Openに掲載された英国の喫煙開始年齢と肺癌死亡率の長期推移に関する論文に基づいており、英国女性では、若年期喫煙開始割合が上昇したのち、一時下降し、再び上昇したためである。喫煙習慣は単調に広がったのち縮小すると暗に仮定されることが多いが、実際には、上昇、減少、上昇といった単純ではない変化がみられ、データを見る際に注意を要する。 10代の喫煙から80代の死亡までが観測されている出生コホートは限られ、欠測の多いアンバランスなデータであることにも注意を要する。また、日本人男性にみられるように、若年期喫煙割合が上昇する一方、非喫煙者割合が上昇し、禁煙開始が若年化するような複数の指標が異なる変化を示し、高齢での死亡は未観測で十分検討できない場合がある。また、出生コホートを考慮せずに成人喫煙割合と年齢調整肺癌死亡率のような要約指標の暦歴による変化を示し、解釈を試みることがあるが、誤った印象を与えており注意を要する。 このように、曝露開始から死亡までが半世紀以上と長期である際の統計的な問題点について国内学会、国際学会で発表した。喫煙は世界的問題であり、実際の長期データに基づいて国際誌、国際学会で報告することは重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、(1)過去の調査データの収集、(2)文献調査、(3)実際のデータの解析、(4)統計学的な方法論確立と問題点の検討、(5)研究成果の公表を予定しており、おおむね達成した。詳しくは、以下のとおりである。(1)日本および英国以外の国も含め喫煙に関する過去の調査データの収集を行っている。(2)喫煙および方法論に関する文献調査を行っている。(3)国際比較に関して着手している。(4)統計学的な方法論および問題点の検討に関して着手している。(5) 昨年度は英国(Great Britain)における喫煙開始年齢と肺癌死亡率、日本における喫煙開始年齢と喫煙率、肺癌死亡率の長期推移を出生コホートに着目しそれぞれBMJ OpenとBull World Health Organに発表した。これらのデータに基づいて統計的問題点を整理し、日本計量生物学会年会及びInternational Society for Clinical Biostatisticsで発表を行った。日本の喫煙と肺がんの長期推移について日本疫学会で発表を行った。Bull World Health Organに掲載された日本の論文は日本禁煙医師連盟通信やAPACT(The 10th Asia Pacific Conference on Tobacco or Health)のブースで紹介された。国立国際医療センターのセミナー、呼吸器フォーラム、ソウル大学公衆衛生学部に招待された際、関連した内容をわかりやすく講演した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、(1)過去の調査データの収集、(2)文献調査、(3)実際のデータの解析、(4)統計学的な方法論確立と問題点の検討、(5)研究成果の公表を予定している。詳しくは、以下のとおりである。(1)引き続き調査データの収集を行う。喫煙に限らず、死亡統計に影響を与えているのではないかと考えられる多様なリスク要因に関して検討する。また、他国、特に欧米とアジアでの統計データの存在について検討する。(2)引き続き喫煙および方法論に関する文献調査を行う。(3)国際比較を行う。喫煙以外のリスク要因についても解析を行う。(4)統計学的な方法論および問題点の検討を行う。(5) 喫煙開始年齢、喫煙率、肺癌死亡率の出生コホートを考慮した国際比較の結果の論文公表及び学会公表を行う。統計学関連の学会で発表する。特に前年度からの研究成果をInternational Society for Clinical Biostatistics、日本疫学会などで発表予定である。非専門家に対して、分かりやすい文章での解説を作成し、ホームページでの公表あるいは図書等での公表を行う。統計数理研究所のセミナー等で発表を行う予定である。喫煙と肺癌の問題、あるいは肥満の問題などは幅広い人々に理解してもらうことが、重要である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者の所属が変更となったことが影響し、物品費の使用が当初計画よりも少なくなった。また、研究成果投稿や印刷・会議費などの使用が少なかった。 関連書籍購入のための物品費、成果発表のための旅費、論文原稿の英文校閲費、研究成果の投稿や印刷などのその他の費用として使用する。
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Research Products
(8 results)