2012 Fiscal Year Research-status Report
がん創薬を支援するバーチャルランダムスクリーニング法の開発
Project/Area Number |
24500364
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
大和田 勇人 東京理科大学, 理工学部, 教授 (30203954)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 伸 東京理科大学, 薬学部, 教授 (00222472)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 機械学習 / 創薬 / ドッキングシミュレーション / タンパク質 |
Research Abstract |
本年度は、機械学習を用いた化合物の結合判定を行った。 機械学習を用いた化合物の結合判定では、現在多くの研究者が用いている結合シミュレーションソフトよりも高い判定性能を目指した。そこで、病気に関係するタンパク質に対して、結合の強さが知られている化合物を集め、それらの化合物の特徴を機械学習することで、新しい化合物の結合の強弱を判定した。この際、機械学習に用いる特徴データとして、化合物とタンパク質の複雑な力学的関係を示す結合シミュレーションソフトの結果と、化合物の分子量や疎水性などの化学的性質を示す化学的情報を用いた。特に、結合シミュレーションソフトは化合物とタンパク質の三次元構造やその相互作用、力学的計算などを考慮して総合的な結合力を出力するため、その出力結果は化合物の特徴を示す上で非常に重要である。 また、機械学習においては、判別性能の高いサポートベクターマシンの回帰計算機能を用いることで、化合物の結合の強さを0から1のスコアで表した。また、0.5を結合の強弱の境目、結合するかどうかの基準とした。このスコアを結合可能性スコアと名づけた。結合可能性スコアを用いることで、新しい化合物の結合の強さを自動的に判定することができる。 約3000化合物を用いた実験の結果、化合物のタンパク質に対する影響力を示すKi値と結合可能性スコアとの間に、高い相関があることがわかった。そのため、創薬研究で化合物とタンパク質の結合実験を行う前に本研究の手法で結合可能性スコアを計算することで、結合が強いであろう化合物のみを実験に用いることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、機械学習による化合物の結合判定を行った。 まず、タンパク質と化合物の相互作用や、分子や電子の相互作用の取得について、結合シミュレーションソフトを用いることとした。結合シミュレーションソフトはタンパク質と化合物間の複雑な力学計算を行い、総合的な相互作用を得られるためである。また、薬学的知識として、各化合物の化学的性質を示す化合物の化学的情報を得た。以上のデータを元に、結合する化合物に共通するパターンを見つけるため、機械学習を行った。このとき、結合するかどうかだけでなく、結合の強弱を示すことができる方策を研究した。結果、サポートベクターマシンによる回帰計算を用いて結合可能性スコアを計算することで、高い精度での結合判定と、結合の強弱を出力することが可能となった。以上より本年度の目標である化合物がタンパク質にドッキング可能かどうかを判定し、スクリーニングを行うシステムを実現することを達成している。 さらに、当初の計画では創薬支援のための実験を行う予定がなかったが、機械学習手法が確立したため、既存のタンパク質と化合物を用いて実験を行った。その結果、判定精度は非常に高く、実際の活性値と判定結果の相関が高かった。そのため、本研究の達成度は高いといえる。 以上の実績から、本研究の手法を本学内での創薬研究に利用することを検討しており、研究分担者の青木教授が所持しているデータについて結合可能性を計算し、有用な化合物について結合実験を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、論理プログラミングにおける相互作用情報と3次元構造情報の利用と、薬学的知識の導入である。 論理プログラミングにおける相互作用情報利用では、活性データベースであるChemblからタンパク質と化合物の結合様式や力場情報を入手し、化合物がタンパク質のどの部分に作用するか、化合物がどのような構造ならばタンパク質の構造と適合するか等のルール抽出を行う。また、3次元構造情報の利用では、化合物の3次元構造を制約論理プログラミングで利用するための手法を研究する。化合物の3次元構造は非常に柔軟であり。ひとつの化合物がとりうる構造は非常に多く、多彩である。そのため、構造の柔軟性を減らし、構造の変化が離散的になるような制約を導入し、論理プログラミング上で化合物のとりうる3次元構造を計算できるようにする。その上でタンパク質と化合物の相互作用や、力場情報などを利用し、化合物がどのような構造のときにタンパク質と結合するか、そして化合物がタンパク質に結合できるかどうかを自動的に判定する。 薬学的知識の導入では、研究分担者である青木研究室と共同で化合物の結合実験を行い、論理プログラミングに導入可能な薬学的知識を探す。実際の実験に関わることで、これまでデータとして扱っていた化合物やタンパク質に対する知見を深め、帰納論理プログラミングでの仮説生成や、制約論理プログラミングにおける空間構造処理について、新しい方法のブレイクスルーを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
大規模計算処理用のワークステーション 結合実験用の薬品類 国外学会参加費用 謝金(英語論文添削、プログラミング補助アルバイト料)
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