2012 Fiscal Year Research-status Report
大脳基底核間接路のドーパミン依存的回路動態遷移機構の解明
Project/Area Number |
24500372
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
北野 勝則 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (90368001)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 大脳基底核 |
Research Abstract |
視床下核―淡蒼球神経回路のドーパミン依存的な回路動態変化をもたらす可能性の1つとして、視床下核ニューロン応答特性のドーパミン依存性が考えられている。視床下核ニューロンに発現する脱分極活性型カルシウムイオンチャンネル(Cav2.2)の活性レベルがドーパミンに修飾され、細胞内カルシウム濃度の変化が、視床下核ニューロンの自律活動の規則性に影響を与えるとされている(Ramanathan et al., 2008)。この特性は従来の視床下核ニューロンモデルでは再現することが出来ないため、特に、自律活動の生成の役割を担うナトリウムチャンネルのモデル化を中心に、視床下核ニューロンモデルを構築した。 視床下核ニューロンを始め、高頻度な神経活動を示すニューロンには、Nav1.6型のナトリウムチャンネルが発現している。このチャンネルタイプの既存モデルは、詳細な状態遷移を記述した計算コストの大きい(自由度の大きい)モデルであり、また、必ずしも実験データを再現するとは言えなかった。そこで、このチャンネルタイプのよりシンプル(低自由度)かつ再現性の高いモデルを構築した。その結果、計算コストは約1/8になり、かつ、従来モデルと比べ、より実験データに近い特性を示すことが確認された(Do & Bean, 2003)。またドーパミン濃度の変化を想定したシミュレーションにより、自律活動の規則性についても、実験データと定性的傾向が一致した(Ramanathan et al., 2008)。特に、計算コストの軽減は、今後実施する神経回路モデルを用いたシミュレーション研究の効率化にとって、重要な意味を持つ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載した当初の計画の通り初年度は、視床下核ニューロンのモデル構築について、定量的な意味での改善は必要ではあるものの、概ね(80%以上)達成していると考えている。また同時に、2年目以降に計画している神経回路モデルの構築とシミュレーションによる解析についても、当該神経回路の回路構造に関する形態的特徴について、可能な範囲において(文献に基づく)、先行研究の調査をほぼ終えた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、 (1)当該神経回路内の情報伝達を担うシナプスの特性の解析およびモデル化、 (2)これまでに構築したニューロンモデル・シナプスモデル、また調査した回路構造をもつ神経回路モデルのシミュレーションとその解析、 と進めていく計画である。(1)について、シナプスはニューロンが生成した神経活動を伝達する動的フィルタとしての機能をもち、ニューロンの応答特性と同じくらい重要な回路動態を決定する因子である。最新の実験的研究により、淡蒼球―視床下核シナプスの動的特性について調べられ、その結果、このシナプスは従来のシナプスモデルではうまく再現できないことがわかっている(Atherton et al., 2013)。すでに主要なデータは提供してもらい、これに基づいて従来モデルを拡張することで、対象のシナプスのより尤もらしいモデルを構築し、回路モデルの精度を向上させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度の視床下核ニューロンモデルの構築の過程で適用した、モデルパラメータの最適化手法についての手法そのものの研究成果発表を新たに計画したため、その発表を行う次年度に繰り越すこととした。 これ以外の翌年度の研究費の使用計画については当初通りを予定している。
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Research Products
(1 results)