2013 Fiscal Year Research-status Report
脊髄小脳失調症I型における複合体タンパク質プロテオーム解析による分子病態の解明
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24500378
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
田川 一彦 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (80245795)
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Keywords | ポリグルタミン病 / 脊髄小脳失調症I型 / アタキシン1 / 複合体タンパク質 / プロテオーム解析 |
Research Abstract |
ポリグルタミン病である脊髄小脳失調症I型(SCA1)はアタキシン1(Atxn1)のポリグルタミン鎖の異常伸長を原因としているが、その分子病態は未だ不明な点が多い。我々はオミックス研究よりこの病態を抑制する標的タンパク質を同定し、ポリグルタミン病モデル系を用いてその病態の改善を報告してきた。本研究計画では、Atxn1を含む高分子複合体のプロテオーム解析を行い、神経変性に至る前のニューロンの機能障害に関わる複合体タンパク質を同定および定量し、SCA1病態への効果について疾患モデル系を用いて検証する。また、複合体を形成しているタンパク質のみを対象とする網羅的解析であることが本研究の特徴である。 これまで定量的ショットガン・プロテオーム解析による結果が得られていないが、これに先立ち2つの知見が得られた。 1.ポリグルタミン病において共通する分子病態機構を理解するために、ERA/VCP/p97に注目した。DNA損傷修復機能の阻害について報告した(Fujita K et al, Nature Communications 2013)。 2.疾患モデルショウジョウバエを用いた遺伝学とシステム生物学を組み合わせ、SCA1のDNA損傷に重要な役割を持つタンパク質としてRpA1とChk1を報告した(Barclay SS et al, Human Molecular Genetics 2014)。 これら2つ報告より、Atxn1と複合体を形成する可能性があるタンパク質として新たにVCPとRpA1がみいだされた。これらの知見を加え、Atxn1複合体を分画する条件の検討を進めることと並行し、リン酸化プロテオーム解析に着手すること、さらに新たにみいだしたVCPとRpA1の免疫沈降に続くプロテオーム解析で複合体の同定を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Atxn1複合体の定量的ショットガン・プロテオーム解析と他の解析を組み合わせて複合体形成タンパク質を同定する計画であったが、現状この手法で結果が得られていないが、これに先立ち2つの知見が得られたので報告する。 1.ポリグルタミン病において共通する分子病態機構を理解するために、ポリグルタミン鎖に結合するタンパク質として現在所属する研究グループが同定したTERA/VCP/p97(以下VCPと記述)に注目した。Atxn1、アタキシン-7(脊髄小脳失調症7型)、アンドロジェン受容体(球脊髄性筋萎縮症)、ハンチンチン(ハンチントン病)といった、4種類のポリグルタミン病タンパク質で検討したところ、正常型、ポリグルタミン鎖が異常伸長した変異型がともにVCPに結合した。VCPはER近傍、核、ミトコンドリアにおいて機能する多機能タンパク質で、今回の報告では主にVCPを介したDNA損傷修復機能を共通病態分子機構として明らかとした(Fujita K et al, Nature Communications 2013)。 2.疾患モデルショウジョウバエを用いた遺伝学とシステム生物学を組み合わせ、SCA1のDNA損傷に重要な役割を持つタンパク質としてRpA1とChk1を報告した。SCA1モデルショウジョウバエとDNA修復関連遺伝子のショウジョウバエライブラリーを用いたスクリーニングより、パスウェイ解析し、病態ネットワークを構築し、RpA1とChk1が中心的な役割を果たしていることを推定した。さらに、免疫沈降法によりRpA1とAtxn1が直接的に結合することを示した(Barclay SS et al, Human Molecular Genetics 2014)。 ショットガンプロテオーム解析に基づいた計画は進行していないが、上記の通り新たな複合体構成タンパク質を既に2つ報告した。これらの成果と、今後はショトガンに限らずプロテオーム解析を行うことで、計画全体を遂行する。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに報告した2つの論文より、Atxn1と複合体を形成する可能性があるタンパク質として新たにVCPとRpA1がみいだされた。VCPは自らが600kDaの6量体であり、Atxn1を含む複数のタンパク質が結合した巨大複合体を形成している場合は、現状用いてきたゲル濾過クロマトグラフィーによる精度の高い分画が困難であると予想される。また、RpA1との結合をはじめ既に報告されているタンパク質と数多くの種類の複合体を形成している事も考慮する必要がある。以上の知見より、Atxn1複合体を分画する条件の検討を進めるのと並行し、リン酸化プロテオーム解析に着手すること、さらに新たにみいだしたVCPとRpA1の免疫沈降に続くプロテオーム解析で複合体の検討を行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
プロテオーム解析の進行が遅れているため、その推進費用として消耗品(試薬費)を次年度に繰り越す。 変更の内訳は試薬を200から231へ変更する。(金額単位:千円)
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Systems biology analysis of Drosophila in vivo screen data elucidates core networks for DNA damage repair in SCA12014
Author(s)
Barclay SS, Tamura T, Ito H, Fujita K, Tagawa K, Shimamura T, Katsuta A, Shiwaku H, Sone M, Imoto S, Miyano S, Okazawa H.
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Journal Title
Human Molecular Genetics
Volume: 23
Pages: 1345-1364
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] A functional deficiency of TERA/VCP/p97 contributes to impaired DNA damage repair in multiple polyglutamine diseases2013
Author(s)
Fujita K, Nakamura Y, Oka T, Ito H, Tamura T, Tagawa K, Sasabe T, Katsuta A, Motoki K, Shiwaku H, Sone M, Yoshida C, Katsuno M, Eishi Y, Murata M, Taylor JP, Wanker EE, Kono K, Tashiro S, Sobue G, La Spada AR, and Okazawa H
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 4
Pages: 1816
DOI
Peer Reviewed
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