2013 Fiscal Year Research-status Report
移植神経細胞を介した神経回路網の再構築を基盤とした新規細胞治療モデルの開発
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24500381
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
出口 誠 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (10452640)
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Keywords | 錐体細胞 / 神経回路 / 神経幹細胞 / 胚性幹細胞 / 神経分化誘導 |
Research Abstract |
昨年度までに我々はGFP(Green Fruorecens Protein)ES細胞株を用い、マウスストローマ細胞株(MS5細胞)との共培養法を改編し神経分化誘導を行った神経前駆細胞が、P3マウス大脳各部位(運動野、感覚野、視覚野、聴覚野)の皮質深層(第5層)へ移植された場合、運動野からは錐体路視床前核へ、感覚野からは視床後外側核・上丘腹側・橋腹側へ、視覚野からは外側膝状体・上丘背側・橋腹側へ、聴覚野からは内側膝状体・下丘へと軸索を投射する事を確認した。また、暗視野検鏡により分化細胞の細部、具体的には軸索、樹状突起から樹状突起棘まで観察可能であった。以上の結果からは、MS5との共培養で神経系へ分化誘導したES細胞由来の神経前駆細胞は脳内の適切な部位(皮質第5層)で軸索を投射する錐体細胞へ分化可能である事が示された。つまり移植細胞は軸索投射性の錐体細胞へ分化出来、かつ脳内神経ネットワーク構築へ参加可能である事が示された。これが運動神経細胞が選択的に障害される筋委縮性側索硬化症や脊髄損傷などで応用されれば、神経ネットワークの再構築を基盤として運動機能の改善をもたらす新しい治療概念を構築出来る可能性がある。そこで、本年度はこの現象が、神経前駆細胞の発現遺伝子プロファイルによって特異的なものなのか、あるいは非特異的なものなのかの評価を行った。具体的にはレチノイン酸を用いて脊髄神経に特異的な遺伝子発現プロファイルを有する神経前駆細胞を誘導し、これを大脳皮質深部へ移植した。結果、軸索はMS5との共培養で得られた、前脳背側の神経細胞に特異的な遺伝子プロファイルを持つ神経前駆細胞移植に比べ、劇的に軸索伸長が減少した。この結果は、神経細胞移植を行う場合、各部位に特異的な遺伝子発現プロファイルを有する細胞を移植する事が重要である事を示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一年目に①効率的な神経分化誘導、②神経前駆細胞移植による脳内神経回路の再構築が可能である結果を得た。次に遺伝子発現プロファイルが、移植後宿主脳内において神経分化、神経回路網形成能に影響するのかどうか検討した。まず胚様体+レチノイン酸法により、脊髄神経前駆細胞に特異的な遺伝子発現プロファイルを有する神経前駆細胞が誘導可能であった。次にこの細胞を大脳皮質深部へ移植し、同様に神経回路の構築が可能かどうかを評価した。一連の実績は当初の予定とほぼ合致するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこの正常解剖に準じて構築された正確な神経回路網が中枢神経系内において形態学的のみならず実際に機能しているかどうかについて検討する。具体的には以下の通りである。移植3週間後マウス第6頚髄背側に逆行性トレーサー(Fluoro-Gold®)を注入する。更に2週間後に脳を取り出し、共焦点顕微鏡下にES-NPCs由来錘体細胞内のGFPとFluoro-Gold®の共局在、更にCTIP2、Otx1あるいはTBR1(いずれも皮質第5層錐体細胞マーカー)との共局在を確認する。周囲の宿主錘体細胞内でも同様に同領域でトレーサーの取り込みがある事を確認する。この結果から宿主細胞の錘体細胞と同様に移植細胞由来の錘体細胞も軸索を介した情報伝達に関与している事が証明される。また順行性トレーサーを各移植部位に注入し、その皮質化ターゲットの正確性を解析する。具体的には蛍光分子結合デキストラン(Fluoro-Ruby®:Tetramethylrhodamine dextran-amine)10%溶液を、細胞移植後3週間後に同皮質部位に注入する。更に2週間後に脳を取り出し、GFP陽性軸索、樹状突起とrhodamineとの共局在を解析し、形態学的な神経回路網の正確性が機能的にも正確である事を証明可能である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費:本年度の実験内容には大きな変更点は無かったが、細胞培養、免疫染色等in vitroの研究が順調にすすんだため、主に高額な抗体、試薬の購入数が大幅に減少し、購入予定費がかなり低額に抑えられたため、未使用額が生じた。 旅費:本年度参加を予定していた米国神経学会には日本の学会と時期が重なり、参加する事が出来なかったため、旅費、参加費の未使用額が生じた。 物品費の未使用額については平成26年度に予定している動物実験で使用する試薬や動物の購入費と併せて使用する予定である。 旅費の未使用額については平成26年度の学会参加費、旅費と併せて使用する。
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