2014 Fiscal Year Research-status Report
移植神経細胞を介した神経回路網の再構築を基盤とした新規細胞治療モデルの開発
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24500381
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
出口 誠 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (10452640)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 錐体細胞 / 神経回路 / 神経幹細胞 / 胚性幹細胞 / 神経分化誘導 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに我々はGFP(Green Fruorecens Protein)ES細胞株を用い、マウスストローマ細胞株(MS5細胞)との共培養法を改編し神経分化誘導を行った神経前駆細胞が、P3マウス大脳各部位(運動野、感覚野、視覚野、聴覚野)の皮質深層(第5層)へ移植された場合、軸索投射性の錐体細胞へ分化出来、かつ脳内神経ネットワーク構築へ参加可能である事を示した。これが運動神経細胞が選択的に障害される筋委縮性側索硬化症や脊髄損傷などで応用されれば、神経ネットワークの再構築を基盤として運動機能の改善をもたらす新しい治療概念を構築出来る可能性がある。次にこの現象が、神経前駆細胞の発現遺伝子プロファイルによって特異的なものなのか、あるいは非特異的なものなのかの評価を行った。具体的にはレチノイン酸を用いて脊髄神経に特異的な遺伝子発現プロファイルを有する神経前駆細胞を誘導し、これを大脳皮質深部へ移植した結果、軸索はMS5との共培養で得られた、前脳背側の神経細胞に特異的な遺伝子プロファイルを持つ神経前駆細胞移植に比べ、劇的に軸索伸長が減少した。この結果は、神経細胞移植を行う場合、各部位に特異的な遺伝子発現プロファイルを有する細胞を移植する事が重要である事を示している。本年度はES細胞由来神経前駆細胞の移植から構築された脳内神経回路の情報伝達への関与を順行性・逆行性トレーサーによって証明予定であったが、移植細胞自体の生存と機能性の確認の必要性も考慮された。そのため当初予定していなかった脳スライス培養上で移植細胞のパッチクランプテストを追加実験する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一年目に①効率的な神経分化誘導、②神経前駆細胞移植による脳内神経回路の再構築が可能である結果を得た。次に遺伝子発現プロファイルが、移植後宿主脳内において神経分化、神経回路網形成能に影響するのかどうか検討した。まず胚様体+レチノイン酸法により、脊髄神経前駆細胞に特異的な遺伝子発現プロファイルを有する神経前駆細胞が誘導可能であった。次にこの細胞を大脳皮質深部へ移植し、同様に神経回路の構築が可能かどうかを評価した。最終年度で、ES細胞由来神経前駆細胞の移植から構築された脳内神経回路の情報伝達への関与を順行性・逆行性トレーサーによって証明予定であったが、結果の評価の過程で移植細胞自体の生存と機能性の確認の必要性も示唆された。そのため当初予定していなかった脳スライス培養上で移植細胞のパッチクランプテストを行う必要が生じたため、一年の追加実験期間の延長を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で移植されたES細胞由来神経前駆細胞が脳内において神経回路網形成に関与可能である事は証明できている。今後は構築された脳内神経回路が実際にどのように機能しているか逆行性・順行性トレーサーで証明予定である。また、これまでの研究過程で、移植細胞自体の生存、機能についても証明する必要性が示唆された。そこで、今後、移植脳のスライス培養上での移植細胞に対するパッチクランプテストを行う予定としている。
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Causes of Carryover |
最終年度で、ES細胞由来神経前駆細胞の移植から構築された脳内神経回路の情報伝達への関与を順行性・逆行性トレーサーによって証明予定であったが、結果の評価の過程で移植細胞自体の生存と機能性の確認の必要性も示唆された。そのため当初予定していなかった脳スライス培養上で移植細胞のパッチクランプテストを行う必要が生じたが、当該テストに至るまでの解析等に一定期間を要するため、今年度の予算に未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は再構築された脳内神経回路に対して順行性・逆行性トレーサーによってその機能性を証明する。具体的には移植3週間後マウス第6頚髄背側に逆行性トレーサー(Fluoro-Gold(R))を注入し、2週間後に脳を取り出し、共焦点顕微鏡下にES-NPCs由来錘体細胞内のGFPとFluoro-Gold(R)の共局在を確認する。また順行性トレーサー(Fluoro-Ruby(R))を各移植部位に注入し、その皮質化ターゲットの正確性を解析する。細胞移植後3週間後に同皮質部位に注入し、2週間後に脳を取り出し、GFP陽性軸索、樹状突起とFluoro-Ruby(R)との共局在を解析する。更に移植細胞の脳スライス培養を培養液内で浮遊培養を行い、GFP陽性の第5層錐体細胞に対してパッチクランプテスト行う予定である。これにより実際に生体内での生存を確認する。今年度生じた未使用額については、当該実験に使用するトレーサー、パッチクランプ実験に使用する試薬一式の購入に充てる予定である。
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