2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24500383
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
有働 洋 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70363322)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 神経新生 / マウス / 細胞 / 記憶 / 情動 |
Research Abstract |
本課題は、神経新生を人為的に誘導して動物行動に与える影響を調べるとともに、神経新生を促進させる新規の物質を探索することを目的としている。研究内容は、大まかに動物および細胞を用いた2つの実験系に分けられ、前者は、遺伝子発現を制御して神経新生のレベルを調節し、記憶や情動にたいする影響を調べるものであり、後者は、神経幹細胞様のレポーター細胞株を用いて、神経新生に効果のある物質を効率的に探索しようとするものである。 平成24年度は3年間の研究期間の初年度にあたり、主に実験系の構築に注力し、概ね計画通りに研究を進めることができた。具体的には、動物の系では、リバース・テトラサイクリン制御トランスアクチベーター(rtTA)システムを用いて、神経幹細胞の増殖に関わる遺伝子を人為的に発現制御することを目指し、神経幹細胞においてrtTAを発現するマウスを作出した。一方、目的遺伝子としては、神経幹細胞の増殖に関わる線維芽細胞増殖因子や上皮細胞増殖因子の受容体(FGFR1とEGFR)に注目し、これらをTetOプロモーターの制御により発現するマウスを作出した。今後、これらの動物を交配し、目的遺伝子の発現を確認するとともにその表現型について解析する予定である。一方、細胞の系では、神経幹細胞様の特徴をもつNE4C細胞をもとに、神経分化を効率的に検出できるレポーター細胞株を樹立した。レポーターとして黄色蛍光タンパク質とルシフェラーゼを用いることで、蛍光観察による神経細胞の確認と発光による神経分化の定量が可能になった。今後は、レポーター細胞に各種の物質を投与することで、神経新生に効果のある因子を見つける予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、当初に計画した実験内容を概ね達成することができた。初年度においては、課題研究の基盤となる実験系の構築が主なテーマであった。これらは、マウスの作出やレポーター細胞株の樹立など基礎的なものであるが、遅延が生じると今後の研究計画に大きな影響を与えかねない。幸い、動物と細胞を用いた2つの実験系は平行して行うことができ、特に進行の妨げとなる問題も発生せず、予定通りの進捗を見せた。 動物を用いた実験系では、遺伝子発現を人為的に誘導するためにrtTAシステムを用いるが、これにはrtTAおよびTetOマウスの2種類のトランスジェニックマウスが必要である。遺伝子を導入しても発現が見られない場合も多いが、rtTAマウスについては4系統を得ることができ、そのうち2系統で発現を確認することができた。同様に、TetO-FGFRとTetO-EGFRマウスについても複数の系統を得ることができた。しかし、これらの評価にはrtTAマウスと交配させて得られるダブルトランスジェニックマウスを解析する必要があり、今後の結果を待つ必要がある。一方、細胞を用いた実験系では、新規の神経新生促進因子を見出すことを目的として、レポーター細胞株の作製に尽力した。神経幹細胞様の特徴を持つNE4C細胞にレポーター遺伝子を導入し、神経新生に伴って黄色蛍光タンパク質とホタルルシフェラーゼを発現するように設計した。その結果、多数のレポーター細胞株を得ることができたが、我々はさらに選別を重ね、特に誘導効率の高い細胞株を得た。今後、このレポーター細胞を用いて、効率的に神経新生促進因子を探索する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今年度の研究で得られたトランスジェニックマウスやレポーター細胞株を用いて研究を遂行する。動物を用いた系では、まず、rtTAマウスとTetOマウスの交配させてダブルトランスジェニックマウスを得る。この動物に誘導剤であるドキシサイクリンを数週間投与し、目的遺伝子であるFGFR1やEGFRの発現を人為的に誘導する。次に、目的遺伝子の発現を確かめ、さらに神経新生のレベルを解析する。神経新生の誘導が確認できれば、行動実験に移る。主に記憶や情動を調べるテストを行い、動物行動にたいする神経新生の効果を調べる。一方、細胞を用いた系では、樹立したNE4Cレポーター細胞を用いて、実際にスクリーニングを行う。今回は、天然物質ライブラリー(ユーハ味覚糖株式会社より提供)を用いて、神経新生に有効な物質をスクリーニングする予定である。まず、1次スクリーニングを行って候補物質をある程度選択する。次に、2次スクリーニングを行い、その再現性を確かめるとともに、濃度依存的な作用を調べる。特に有効な物質が見つかった場合は、動物に投与して、神経新生に対する効果をin vivoで検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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