2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24500383
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
有働 洋 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70363322)
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Keywords | 神経新生 / マウス / 細胞 / 記憶 / 情動 |
Research Abstract |
本課題では、動物および細胞の2つの実験系を用いて、神経新生の効果とそのメカニズムを調べることを目的としている。具体的には、神経新生を人為的に誘導して動物行動への影響を調べるとともに、神経新生を促進させる物質の探索を行う。 平成25年度は、昨年度の研究を継続する形で進めた。まず、動物を用いた実験では、薬剤で遺伝子発現を誘導するため、改良型のリバース・テトラサイクリン制御トランスアクチベーター(rtTA)システムを利用して神経新生の誘導を試みた。rtTAシステムに必要な2種類のマウス(rtTAv16を神経幹細胞で発現するマウスと、転写調節領域であるTetOの下流にFGFR1とEGFRの遺伝子を有するをマウス)を交配させ、ダブルトランスジェニックマウスを得た。このマウスに、誘導剤であるドキシサイクリンを2週間投与してTetO制御下の遺伝子を発現させ、さらに核酸類似物質であるブロモデオキシウリジン(BrdU)を投与することによって、分裂細胞をin vivoで標識した。神経新生のホットスポットである脳の海馬領域において分裂細胞の密度を調べたところ、数系統のマウスにおいて、BrdU陽性細胞の増加が確認された。成体マウスでは、海馬(詳しくは顆粒細胞下帯)における分裂細胞の7-8割が神経細胞に分化することから、神経新生が人為的に誘導されているものと推察された。 一方、細胞を用いた実験では、NE4C細胞(神経幹細胞様の細胞株)のレポーター細胞株を用いて、神経新生を促進させる物質のスクリーニングを試みた。マルチウェルプレート上の培養細胞に、約900種類の物質を加えることによって、神経分化に対する影響を調べた。レポーターであるルシフェラーゼや蛍光タンパク質を指標として、神経分化の定量測定と細胞形態の観察を行ったところ、神経分化を促進する幾つかの候補物質を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、計画した研究内容を概ね達成することができた。昨年度は、実験システムの構築(トランスジェニックマウスの作出やレポーター細胞の構築)に重点を置いていたのに対し、今年度は、それらのシステムの検証とその応用に内容が移行している。動物の系では、改良型rtTAシステムによって、誘導剤であるDoxの投与によって遺伝子発現を促し、幾つかの系統において海馬歯状回における分裂細胞数の増加が確認することができた。すなわち、人為的に神経新生を誘導することができたと考えられる。一方、細胞を用いた系では、作製したレポーター細胞に数百種類の物質を作用させて、そのうちの幾つかの物質について神経分化を促進する効果を見出すことができた。これらは当初予定していた通りであり、研究が順調に進展しているものと捉えることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、本研究課題の最終年度にあたる。動物を用いた実験では、ダブルトランスジェニックマウスの行動解析を実施する。具体的には、動物をDoxを投与したものとそうでないグループをに分けて、記憶や情動に対する影響を評価する。記憶としては、海馬依存性の学習テストを行い、バーンズ迷路テストによる空間記憶や恐怖条件付けテストによる文脈記憶を調べる。神経新生は情動(特に、抗うつ用行動)との関わりが示唆されていることから、強制水泳実験を実施する予定である。一方、細胞を用いた実験では、スクリーニングで得られた幾つかの候補物質について確認実験を行う。さらに、候補物質を動物に投与して、実際に、成体での神経新生に効果があるのかどうかを検証する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究課題を進めるにあたって、消耗品の支出が当初の計画より膨らんだため、当初導入予定であった動物行動の装置の購入を見送ることにした。代わりとして、平成26年度に、行動解析用の各種部品を購入することにした。 動物行動の解析に必要な各種部品(バーンズ迷路テストおよび恐怖条件付けテスト用)を購入する費用として用いる予定である。
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