2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24500383
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
有働 洋 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70363322)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 神経 / 海馬 / 行動 / 情動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、細胞と動物の2つの実験系を用いて、神経新生の効果とそのメカニズムについて調べることを目的とした。内容としては、細胞株を用いて神経新生を促進させる物質を探索すること、およびマウスで神経新生を人為的に誘導してその影響を解析することである。 細胞の系: 神経幹細胞様の性質をもつNE4C株を用いて、神経新生を調べるためのレポーター細胞株を作製した。この細胞が神経細胞に分化すると、レポーターであるルシフェラーゼ(発光酵素)が発現する。そこに基質であるルシフェリンを加えれば、発光をルミノメータ-を用いて高感度で検出できる。このレポーター細胞をマルチウェル培養皿で培養し、被検物質として数百種類の天然化合物を添加して、神経細胞への分化を調べた。その結果、既知の神経誘導剤であるレチノイン酸ととともに、弱いながらカロテノイド類に活性があることが明らかになった。 動物の系: マウスに改良型のrtTAシステムを導入して、神経新生を誘導できるようした。誘導剤であるドキシサイクリンの存在下、神経幹細胞のみで成長因子受容体を発現させ、人為的に神経新生を促進しようと試みた。この方法は、他の脳組織への影響を最小限にしながら、成体における神経新生の効果を調べることができる。成体の遺伝子組換えマウスにドキシサイクリンを3週間投与したところ、海馬(歯状回の顆粒下帯)および脳室壁(側脳室の上衣下帯)で神経新生が3割以上増加していることが分った。次に、その動物を用いて様々な学習や情動のテストを行ったところ、学習では差が見られなかったが、不安様行動が有意に減少することが分った。より長い期間神経新生を誘導すれば、学習行動にも効果が見られるかもしれない。 まとめると、神経新生を促進する物質は天然にも存在している可能性がある。また、一定の期間神経新生を促進することで、抗不安様作用などの効果が生じると考えられる。
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