2013 Fiscal Year Research-status Report
神経活動履歴に伴う受容体輸送制御におけるRabエフェクター分子の役割
Project/Area Number |
24500400
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
清末 和之 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 主任研究員 (50356903)
|
Keywords | 膜輸送 / シナプス可塑性 / メタ可塑性 / 活動履歴 |
Research Abstract |
シナプスにおける神経伝達受容体の種類・数量は、シナプス伝達の強度を決めるのみならず、シナプス可塑性の性質を決める大きな要因である。さらに、シナプス可塑性の発現はその神経活動の履歴に依存していることが知られている。しかしながら、その分子機構は明らかではない。本研究では、「神経活動履歴に伴う受容体の輸送制御は、Rabエフェクター分子Rabatpin-5の活動依存的な制御に起因する」との仮説をたて、受容体の輸送に関わる細胞の膜輸送システムがシナプス伝達および可塑性の機能制御に果たす役割を明らかにすることを目的にしている。本年度は以下の項目について明らかにした。 昨年度は恒常性シナプス伝達における関与を明らかにしたが、本年は、長期増強、及び、メタ可塑性における役割を検討した。培養細胞を用いた実験系において薬理学的に長期増強を誘導するとグルタミン酸受容体のシナプス部位への集積がみられるが、rabaptin-5をノックダウンすると、その変化は見られない。また、長期増強を誘導する前の神経細胞の活動状態変化させるとシナプスへ組みこまれる受容体のサブタイプが異なる事を見いだした。その上でrabaptin-5はサブユニット特異的な輸送に関与する結果を得ている。さらにその事実を裏付けを検討している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の計画では、H25年度は、「Rabaptin-5は、エンドソームからの受容体膜輸送のみを制御しているか?」である。これに対して、本年度は、シナプス伝達、及び、可塑性への関与においてエンドソームを含めた膜輸送システムを検討した。 培養細胞を用いた実験系でグリシン刺激によって長期増強を誘導した際に起こるシナプス後部の受容体を評価した。通常、グリシン刺激によってシナプス後部構造であるスパインにAMPA型受容体が集積するが、Rabaptin-5のノックダウンを行った神経細胞では、その集積が阻害された。また、メタ可塑性への関与を検討するために、神経細胞の活動状態を変化させた状態で、グリシン刺激によるLTP誘導をおこなった。興味深いことに、活動状態が低い時にはGluA1が、活動状態が高い状態では、GluA2がスパインに集積する事を明らかにした。その内、Rabaptin-5はGluA1の輸送にのみ関与する事を明らかにした。このGluA1のシナプスへの輸送に関して、エンドソームからの輸送と、もしくはGolgi体からの輸送が考えられる。特に、rabaptin-5にはGGA1が結合すること、GluA1はシナプス近傍で合成されること、さらに、エンドソームからの輸送においてはGluA2の排他的機構が必要なことから、Golgi体からの輸送の可能性が高い事を示唆している。そのため、GGA1発現等を行うためのクローニングを実施した。
|
Strategy for Future Research Activity |
H26年度は以下の項目について明らかにしていく。 ・可塑性における役割をKOマウスを用いて検証する。KOマウスが利用できることで、急性スライス標本をもちいて長期増強、長期抑圧、シナプス伝達物質放出能の変化等、多岐にわたる神経系における機能を評価できる。この点について検討する。 ・rabaptin-5には5種のスプライスバリアントが存在し、少なくとも神経系には2種あることを確認している。この2種の差異はRab5の結合領域の有無である。このことから、エンドサイーシスには関与せず、Golgi体からの輸送、また、エンドソームからリサイクリングエンドソームへの輸送に関わることが推測される。また、すくなくともRabaptin-5は活動依存的に分解されることから、これらスプライスバリントに関しても、分解制御の有無と選択的スプライスの有無を明らかにすることによって、膜輸送の協調的で精緻な機構が働いていることを明らかに出来ると考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の一層の加速をはかるためには、次年度も研究補助員が必要である。実験の効率化によって、消耗品の見直しをし、予定額を見直した、 最終年度での実施を加速するためには、研究補助員が必須であり、そのため、持ち越した予算で雇用を行う。それ以外の予算は消耗品と成果発表のために旅費に充当する。
|