2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24500418
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
樋田 一徳 川崎医科大学, 医学部, 教授 (40253405)
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Keywords | serotonin / olfactory bulb / synapse / neural circuit / single cell trace |
Research Abstract |
匂い情報を処理し、高次中枢へ伝える嗅球内には多種多様なニューロンが存在し、神経回路を形成している。この嗅覚神経回路は高次中枢からの遠心性入力により調整を受けていることが知られているが、多様な神経活性を示すセロトニンを含有するニューロンは未だ不明な点が多い。本研究は、起始核から嗅球までの遠心性ニューロンの投射の全体像、脳各領域への分枝、さらに嗅球内でのシナプスの形態を明らかにすることを目的とするものである。特に本年度はセロトニンニューロンに焦点を絞り解析を行った。 具体的方法として、マウス脳背側縫線核にpal GFP Sindbis virusをインジェクションし単一ニューロンを標識した。灌流固定後、全脳の連続切片を作製し、抗GFP抗体を用いて感染標識したニューロンを可視化し、多重蛍光免疫染色を行い、セロトニンニューロンであることを確認した標識ニューロンの全体像を、縫線核から嗅球に至るまでデジタルトレースを行った。更に、嗅球の冠状断連続切片を抗セロトニン抗体による包埋前免疫染色を行い、透過型デジタル電子顕微鏡でシナプスを観察した。またシナプスの微細構造の詳細を立体的に解明するために、デジタル電子顕微鏡による電子線トモグラフィー解析を行った。 解析の結果、セロトニンニューロンの脳内での全体像が初めて明らかになった。その形態は、起始核からの軸索が嗅球へ向かう途中に、脳の他部位へ分枝を出しながら軸索を嗅球内に投射し、嗅球内で複数のニューロンと非対称性シナプスを形成していた。シナプス結合の構造には多様性が見られた。また、セロトニンニューロンは、VGLUT3と共存してシナプスを形成していた。 以上の結果を第119回日本解剖学会総会に発表、更に論文を投稿して査読を受け、現在修正をして再投稿予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時において計画した予定通りにほぼ順調に進捗している。特に、当該研究費にて購入したデジタルトレースシステムをいかんなく発揮することが出来たと考えている。またJournal of Comparative Neurologyに投稿をしたが、査読結果は概ね良好であり、現在指摘された点について追加実験を行い、論文の完成度を高めている。近く、修正原稿を再投稿する予定である。また本年度はワシントンDCで行われる北米神経科学協会年次総会にて発表を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は更に、セロトニンニューロンのみならず、アセチルコリンニューロンの解析もおこなうつもりであるが、既に予備的実験から本実験に入っており、その興味深いデータが出始めている。これらの成果は、今年度中に学会報告ができると思われ、その内容を可及的速やかに論文発表したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度の当該科研費のうち、約30万円を研究成果報告及び海外研究者との調査打ち合わせ等として海外渡航する予定でいた。研究の進捗状況は概ね順調であったが、研究代表者(樋田)が体調を崩し、秋の学会(北米神経科学協会年次総会)などへの発表が困難となった。このため、この費用を今年度に繰り越し、その費用によって成果発表並びに海外研究者との打ち合わせのために海外渡航を行いたいと考えている。これが、前年度の使用予定が本年度に使用するに至った経緯と理由である。 前述のように、本年度において、昨年度においてできなかった成果発表並びに海外研究者との打ち合わせのために海外渡航を行いたいと考えている。これにより、当該採択研究の実施を貫徹したいと考えている。進捗状況は概ね順調であり、その成果は現在論文投稿を終え、査読を受け、その婦負用を修正し、近く再投稿予定である。
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