2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24500419
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
北尾 康子 金沢大学, 医学系, 准教授 (00019613)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀 修 金沢大学, 医学系, 教授 (60303947)
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Keywords | 神経細胞死 / ATF6 / アストログリア / 脳梗塞モデル |
Research Abstract |
1.ATF6による虚血性神経細胞死制御: H24年度の結果より、小胞体ストレス応答(UPR)の主幹転写因子であるATF6を欠損したマウス(ATF6 KOマウス)では、脳虚血後5日の段階で野生型(WT)マウスに比べ、脳梗塞巣の拡大を認めることが明らかになった。H25年度はその原因について、特にアストロサイトの活性化障害との関連性について検討した。その結果、ATF6 KOマウスにおいて、活性化アストロサイトにより形成されるグリア瘢痕が不十分なため、梗塞後3日より梗塞巣周囲部で組織障害、及び細胞死が多く出現することが明らかになった。更に、ATF6 KOマウスでは、IL-6やLIFなど、アストロサイト活性化を誘導する液性因子の発現量には明らかな低下は認めなかったものの、アストロサイトの活性化に重要なシグナル分子STAT3の活性化が低下していることが明らかになった。以上から、ATF6 KOアストロサイトでは、STAT3-GFAP経路の活性化が障害されている可能性が示唆された。 2.小胞体ストレスによるアストロサイト活性化抑制:上記1.について詳細な検討を行う為、WT及びATF6 KOマウスからアストロサイトを単離培養し、STAT3のリン酸化、GFAPの発現を指標に活性化の程度を比較した。その結果、ATF KOアストロサイトに於いて、STAT3-GFAP経路の活性化が有意に低下していること、小胞体ストレスを軽減するケミカルシャペロン4-PBA処理によりそれらが回復すること、逆に、小胞体ストレス誘導剤ツニカマイシンやタプしガルギン処理により増悪する事が明らかになった。以上より、ATF6は小胞体ストレスを制御することでアストロサイトの活性化を促進している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ATF6 KOマウスの解析及び培養アストロサイトの解析が予想以上に進行した(現在、論文投稿準備中)。 1.マウス脳虚血モデルを用いた検討から、小胞体ストレス応答の主幹転写遺伝子ATF6を介したグリア細胞(特にアストロサイト)の活性化が、脳梗塞後に起こる神経細胞死(虚血性神経性防止)を抑制する上で極めて重要であることが明らかになった。 2.培養アストロサイトを用いた検討から、そのメカニズムについて、ATF6が小胞体ストレスを制御することでアストロサイトの活性化を促進している可能性が示唆された。今後、分子レベルで小胞体ストレスがSTAT3-GFAP経路を抑制するメカニズムを明らかにすることで、脳梗塞発症後亜急性期における病態解明、新たな脳梗塞治療法確立が可能になると期待される。 3.ケミカルシャペロン4-PBAやUPR活性化物質タンゲレチン(IN19)による虚血性神経細胞死制御の実験も順調に進行している。現時点ではサンプル数が少ないことから発表するには至っていないが、今年度中にその神経保護効果が明らかになると期待される。 4.ATF4ノックアウトマウスについてはホモ接合体の発達障害が強く、脳虚血実験(中動脈平湖す)を行うことができなかった。ヘテロ接合体は野生型と脳梗塞の大きさに有意な差は認めなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
特に以下の点について重点的に研究を推進する。 1.ATF6によるアストロサイト活性化促進: これまでの我々の研究結果より、ATF6 KOマウスでグリアの活性化が抑制される理由として、アストロサイト内のシグナル伝達系STAT3-GFAP系が小胞体ストレスの増加により抑制されることが考えられた。今後、小胞体ストレスとSTAT3-GFAP系の関連について、主に培養細胞系を用いて分子レベルで検討する。更に、既に作製しているATF6発現用アデノウイルスベクターを用いて救済実験も行う。 2.小胞体制御化合物による虚血性神経細胞死制御: 既に実験を開始しているIN19(10mg/kg)に加え、ケミカルシャペロン4-PBAによる神経保護効果について検討する。更に、それらの効果がアストロサイトの活性化と関連しているか否かについて検討する。
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