2014 Fiscal Year Annual Research Report
JCウイルス感染が誘導するPML-NBsの変化と、細胞腫瘍化の解明
Project/Area Number |
24500421
|
Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
原 由紀子 杏林大学, 医学部, 講師 (40313267)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅間 博 杏林大学, 医学部, 教授 (10195191)
矢澤 卓也 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50251054)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 進行性多巣性白質脳症 / JCウイルス / 細胞周期 / PML-NBs / DNA複製 / 細胞変性 / 細胞腫瘍化 |
Outline of Annual Research Achievements |
進行性多巣性白質脳症はJCウイルス感染による脱髄疾患である。JCウイルスは中枢神経系の乏突起膠細胞に感染して髄鞘を崩壊する。病理組織学的に、感染した乏突起膠細胞の腫大核には、核全体を占めるJCウイルス封入体(full inclusion)が認められ、病理診断の指標とされてきた。さらに近年我々は、感染初期にはドット状の封入体(dot-shaped inclusions)も存在することを発見した。この封入体は、JCウイルスがドット状の核内ドメイン、PML-NBsに集積するために形成される。PML-NBsは細胞周期制御やDNA複製において重要な役割を担い、その機能破綻は細胞腫瘍化または変性を導くと考えられるが、詳細は明らかでない。また、JCウイルスは実験動物に脳腫瘍などの発症を誘導したが、ヒトに対する腫瘍誘導性はまだ結論に至っていない。そこで我々は、JCウイルス感染におけるPML-NBsの形態変化を観察し、JCウイルス感染たもたらす細胞腫瘍化の可能性を模索した。 その結果、JCウイルスが感染したグリア細胞は核面積増大に伴い核内環境はSからG2期様に変化し、この過程でPML-NBsも腫大化することが明らかになった。腫大化するPML-NBsを足場にウイルス粒子の複製が進行することも明らかになり、これが病理組織学的にはドット状の封入体として認識される。またウイルス感染細胞はMIB-1、PCNA、cyclin A、p53が陽性となり、腫瘍細胞に類似した形質を示すことがわかった。しかし、S期において複製されるのは主にウイルスゲノムDNAで、宿主細胞のゲノムの複製はなく、G2様の細胞環境に移行し、やがて細胞変性することが示唆された。何故、JCウイルス感染細胞が細胞分裂せず変性するのか、PML-NBsとDNA複製機序のメカニズムを解明すれば答えの糸口を得られると推測し、次の研究課題と考えている。
|
Research Products
(7 results)