2012 Fiscal Year Research-status Report
核ラミナ構築タンパク質の変異で誘導される神経変性疾患の発症機序
Project/Area Number |
24500426
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
高森 康晴 関西医科大学, 医学部, 助教 (50309233)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 核膜 / 細胞分化 / ニューロン / グリア細胞 / 核ラミナ / ラミン / 細胞増殖 |
Research Abstract |
1.成体の脳に存在する各種グリア細胞における、3種類のラミン・サブタイプ(A/C、B1、B2)の構成パターンについて成獣ラットを用いて解析した。(結果)グリア細胞におけるラミン・サブタイプの構成パターンは、ニューロンのパターンと異なっており、またグリア細胞間でも一部異なっていた。オリゴデンドロサイト前駆細胞と成熟オリゴデンドロサイトではラミンA/CおよびラミンB1の存在パターンが異なっていた。 2.ラミンA/C遺伝子からは、C末のアミノ酸配列が異なるAとCの2種類のスプライシング・バリアントが生じる。そこで脳の各種細胞におけるラミンA/Cのスプライシング・バリアントの存在ついて成獣ラットを用いて解析した。(結果)脳におけるラミンA/C陽性細胞の多くでは、ラミンAは陰性あるいは弱陽性、ラミンCは陽性であった。しかしラミンAが陽性あるいはラミンCが陰性の神経系細胞も少量みられた。 3.食肉目フェレットの脳のニューロン新生領域の形態、また各分化段階のニューロンの免疫組織学的性質およびラミン・サブタイプの構成パターンについて解析した。(結果)使用した抗体がフェレット由来のタンパク質を認識することはウエスタン・ブロット法で確認した。ニューロン新生領域の形態はげっ歯類などと異なる点がいくつかみられたが、各分化段階のニューロンの免疫組織学的な性質はげっ歯類と類似していた。ニューロン分化におけるラミン・サブタイプの発現パターンも保存されていた。 4.成体の脳における各種の神経系細胞における3種類のラミン結合タンパク質(LAP1、LAP2-beta、LBR)の存在パターンについて成獣ラットを用いて解析した。(結果)3種類のラミン結合タンパク質はニューロンおよび各種グリア細胞において異なるパターンを示した。このパターンはラミン・サブタイプの構成パターンと一部において関連性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.成体の脳に存在する各種グリア細胞における、3種類のラミン・サブタイプ(A/C、B1、B2)の構成パターンの解析については、ホルムアルデヒド固定による免疫組織学的なデータをほぼ得ることができた。研究は予定通り進んでいる。 2.成体の脳の各種細胞におけるラミンA/Cのスプライシング・バリアントの解析に関しては、ホルムアルデヒド固定による免疫組織学的なデータをほぼ得ることができた。研究は予定通り進んでいる。実験動物としてはラットを主に用いているが、ラミンCに関してはフェレットでも同様の観察結果を得ている。フェレットの脳におけるラミンの解析についてはデータの一部を論文に投稿中である。なおラミンAとCの存在に関して、例外的なパターンを示す神経系細胞が存在することが新たに分かった。 3.脳における各種の神経系細胞における3種類のラミン結合タンパク質(LAP1、LAP2-beta、LBR)の存在パターンの解析に関しては、ホルムアルデヒド固定による免疫組織学的をほぼ得ることができた。研究は予定通り進んでいる。成果の一部は第35回日本神経科学大会において報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.成体の脳に存在する各種グリア細胞における、3種類のラミン・サブタイプ(A/C、B1、B2)の構成パターンの解析を継続する。ラミンA/Cに関しては、従来はスプライシング・バリアントであるラミンAとCの両方を認識する抗体を使用していたが、新たにラミンAおよびCに特異的な抗体が有効であることがわかってきた。そこで実験計画を変更し、この抗体も併用して解析する。固定法を変えた解析、およびブロッティング法による生化学的な解析についてもおこなう。 2.脳の各細胞におけるラミンA/Cのスプライシング・バリアントの存在パターンについて解析を継続する。グリアに関しては1で記述した。ニューロンに関しては、ラミンAが陽性あるいはラミンCが陰性の例外的な細胞が存在する可能性が出てきた。そこで実験計画を変更し、このニューロンの、脳における存在領域およびニューロンのサブタイプを解析する。 3.脳における各種の神経系細胞における3種類のラミン結合タンパク質(LAP1、LAP2-beta、LBR)の存在パターンの解析を継続する。固定法を変えた免疫組織学的解析、および各種抗体のブロッティング法によるチェックなどの生化学的な追加実験をおこなう。 4.発生期の脳に存在する神経系の幹細胞や前駆細胞における、3種類のラミン・サブタイプの発現パターンを解析する。免疫組織学的な解析を主流とするが、生化学的な解析もおこなう。動物としてはラット(胎仔および新生仔)を用いる 5.培養条件下でNG2陽性細胞からオリゴデンドロサイトへの分化を誘導し、分化過程における3種類のラミン・サブタイプの動態を免疫組織学的、また生化学的に解析する。次に、ラミン・サブタイプのタンパク質量やmRNA量の変動を生化学的手法で解析する。この解析結果をもとにラミン遺伝子の変異導入実験をスタートさせる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験に用いる備品に関しては、当講座および本学綜合研究施設に設置済みであるため申請しない予定である。 物品費としては各種消耗品の購入を予定している。実験器具類としては、プラスチック器具、ガラス器具、ピンセットなどを購入する。実験用動物としては、主にラット、必要に応じてマウスやその他の哺乳動物を購入する。一般試薬としては、バッファー用試薬、アルコール類、洗剤などを購入する。免疫組織化学用試薬としては、一次抗体、二次抗体、また発色試薬などを購入する。細胞培養用試薬としては、クローン化培養細胞、培養液、血清などを購入する。生化学、分子生物学用試薬としては、ブロッティング用試薬、RNA精製試薬、制限酵素、ベクター類などを購入する。 国内旅費としては、日本神経科学大会、日本解剖学会、日本組織細胞化学会などの国内での学会発表を予定している。 研究成果を投稿論文として発表する予定であり、人件費謝金としては、外国語論文の校閲や論文投稿料、またその他として論文校閲料を予定している。
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Research Products
(9 results)