2012 Fiscal Year Research-status Report
中枢神経原発悪性リンパ腫の免疫回避機構におけるエンドセリン受容体Bの役割
Project/Area Number |
24500427
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
杉田 保雄 久留米大学, 医学部, 教授 (80216316)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大島 孝一 久留米大学, 医学部, 教授 (50203766)
寺崎 瑞彦 久留米大学, 医学部, 准教授 (70320223)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | エンドセリン B 受容体 / 中枢原発悪性リンパ腫 / 神経膠腫 / 免疫回避機構 |
Research Abstract |
「背景と目的」エンドセリン B 受容体(ETBR)は血管収縮物質として知られるエンドセリンの受容体である。その発現は腫瘍増殖能との関連が示唆されており、さらに様々な癌において免疫回避機構との相関が報告されている。本研究の目的は中枢神経悪性リンパ腫(PCNSL)におけるETBRの発現とその免疫回避機構との相関について明らかにすることであるが、本年度は1.方法論を確立すること及び2.PCNSLとの比較のためにまず中枢神経の代表的悪性腫瘍である神経膠腫についてETBRの発現とその腫瘍発生についての役割を検討した。 「対象と方法」2000年9月から20012年4月までの12年間に当施設で経験した神経膠腫68例(毛様細胞性星細胞腫:7例、神経節膠腫:1例、びまん性星細胞腫:2例、乏突起膠腫:4例、乏突起星細胞腫:4例、退形性星細胞腫:8例、退形成乏突起膠腫:10例、退形成乏突起星細胞腫:2例、膠芽腫:30例)を対象とした。凍結標本が得られた14例についてPCR法を用いてETBRの腫瘍での発現を確認した。免疫染色により全例でETBRを発現した腫瘍内の血管数を計測した(10高視野)。また、免疫染色(TIA-1)を用いて、腫瘍内に浸潤した細胞障害性Tリンパ球(CTL)数(10高視野)を計測し、ETBR発現血管数とCTL数との相関を統計学的に解析した。 「結果」凍結標本が得られた14例全例でRNAレベルでのETBRの発現が認められた。膠芽腫では神経膠腫と比較してETBR発現血管数が有意に増加していた(p=0.0061)。またETBR発現血管数の増加が腫瘍内浸潤CTLの低下と相関していた(p=0.0004)。 「結論」 膠芽腫において他の神経膠腫よりも有意に高くETBRが血管内皮細胞に発現していた。ETBRがCTLの腫瘍へのhomingを妨げることが腫瘍の免疫回避に繋がると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究計画としてPCNSLにおけるエンドセリンB受容体(ETBR)の発現、とくにEpstein-Barr(EB)ウイルス陰性例と陽性例におけるETBRの発現の比較検討を予定していたが、平成24年度前半はEB陽性例の検出率が予想よりも低く症例が充分に収集できなかった。そのためにまず、次年度に予定していた比較対象とする悪性神経膠腫におけるエンドセリンのB受容体の発現と同腫瘍の免疫回避機構の解析、研究を先行させた。その結果として悪性神経膠腫におけるエンドセリンB受容体の発現と同受容体が免疫回避機構に関係することを証明した。またこの免疫回避機構は悪性神経膠腫のWHO gradeに相関する傾向を証明した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究計画としてPCNSLにおけるエンドセリン受容体(ETBR)の発現、とくにEpstein-Barr(EB)ウイルス陰性例と陽性例におけるETBRの発現の比較検討を予定していたが、EB陽性例の検出率が予想よりも低く平成24年度前半は症例が充分に収集できなかった。しかし、平成24年度後半から統計学的に解析可能なEBウイルス陽性PCNSL症例を確保することができており、順次PCNSLについても解析を進めている。またその間に上記の様に悪性神経膠腫においてETBRの発現の解析法、統計学的分析方法を確立することができた。したがって当初の計画に基いて次年度は引き続いて1. PCNSLにおけるETBRの発現並びに定量化。2. 腫瘍内浸潤しているリンパ球のsubset(とくにT細胞系統)の解析および定量化。3. EB陽性PCNSLとEB陰性PCNSL例のETBRの発現の比較検討。4. EB陽性PCNSLではLMP1欠失例、EBNA2の亜型による1,2の差異を明らかにしていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
解析用試薬1000(千円)、実験器具類200(千円)を予定している。
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Research Products
(3 results)