2014 Fiscal Year Research-status Report
認知症疾患の原因となる異常蛋白質蓄積の伝播仮説に基づく実験的な病態の解析
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24500429
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
秋山 治彦 公益財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能分野, 参事研究員 (20231839)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 認知症 / 病理 / 異常蓄積蛋白 / 伝播 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の研究で課題となった点(試行ごと,ウェルごとの-本来生じるべきではない-ばらつき)について,その克服に向けた実験を行った.しかし,結論としては本年度も,ヒト脳由来のシードを(1)安定して,かつ(2)十分な濃度・量で調製するところまで到達できなかった.さらに,ばらつきの要因が,recipient側の培養細胞にタウ遺伝子の過剰発現をさせる段階にも存在すると推測された.既報の文献で採用されている,Sarkosyl不溶画分をシードとして使う場合には,雑多な蛋白が,それも大量に含まれることになる.そして,その割合が(疾患によって異なるのはもちろんのこと)症例ごとに異なるた.immunoblotでは抗体による選択的ラベリングを行うのであたかも不溶性の凝集タウが大きな割合を占めているように見えるが,LC/MS/MSで解析を行うとタウの断片の検出頻度は決して高くないことがわかった.通常,生化学的にはさらにSDS不溶画分を調製し,この過程で前述の雑多な蛋白質はかなりが可溶画分に移行して線維化したタウの割合は増す.しかしSDS可溶画分にも相当量の異常タウが入ってしまい,収量は大幅に減少する.Alzheimer病で強固な神経原線維変化を形成している場合はともかく,本研究で対象としている多くのタウオイパチーでは,凝集線維化の過程において“固い”線維を形成する前の段階,主として細胞質にびまん性の蓄積を生じているものの割合が高いことが影響しているものと推測された.なお,前年度に計画したマグネットビーズを用いた免疫沈降による濃縮は収量が小さく断念した. なお,上記の技術的問題とは別に,Gallyas-Braak染色では十分検出できていないタウ異常蓄積の再確認のために,過去の症例遡ってのAT8抗体を用いた免疫組織学的な再評価を継続した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
・培養細胞に関して:概要の項で述べたように,ひとつはヒト疾患脳由来のタウ凝集シードの効率の良い濃縮,安定した量の確保のための技術的問題が未解決である.SDS可溶画分を使用することによる収量の低下を,元となる剖検脳のサンプル量の増大で補うことも検討したが,その場合,SDSで可溶化される(未熟な)凝集体の影響を見落とすことになる. ・概要で(2)としてあげた,本研究の培養細胞実験ではrecipient側の培養細胞に3リピート(3R),4リピート(4R)両方のタウをほぼ同量ずつ強制発現させる必要がある.このバランスを実験間一定に保つのが現状では困難であり,結果の解釈にあたってのバイアスになり得る状況にある.さらに,神経系細胞(SHSY5Yを使用中)は比較的導入コンストラクトの発現が良いが,本研究ではアストロサイト,オリゴデンドロサイトにタウが蓄積する疾患を多く対象に含める必要があることから,これらの細胞株を用いた3Rタウ/4Rタウ両方のアイソフォームの共発現を行わなくてはならず,現在,手元にあるこれらの系統の細胞株において,導入コンストラクトの発現効率が低いことが問題となっている. ・recipientとしてマウスを使用する場合に関して:前年度から試みている3Rタウ/4Rタウの両方のアイソフォームを脳で発現するマウスの作製は成功していない.
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Strategy for Future Research Activity |
・ヒト剖検脳から抽出した異常蓄積蛋白(Sarkosyl不溶画分)によるシード効果を高め,安定して培養細胞における凝集体形成促進を生じさせるための技術的な工夫を継続する.Sarkosylに持ってゆく前の段階でのフィルタリング,低速遠心等,とりわけSDS濃度の変更による回収率の増大を図る. ・残された期間,予算等から,recipientとしてのマウスの使用は中止し,培養細胞に標的を絞る. ・前述のような問題が存在する中で,異常蓄積蛋白質の伝播について,疾患脳において本当にそのようなプロセスが進行しているかどうかを検証しうる,あるいは少なくとも推測しうるエビデンスの抽出に努める.
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Causes of Carryover |
本研究計画の基盤部分にかかわる技術上の問題解消のめどがたっていない状況で,もう1年間,課題克服のための努力を行うべく,26年度の様々な試行に生じる支障が可能な限り小さくなるように工夫して,27年度も実験を継続できるようにした
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
免疫組織化学染色のための基本試薬,および一次抗体の購入,生化学的解析(分画やimmunoblot)のための試薬類の購入,論文のmethod欄に出てこない技術的ノウハウ入手のための学会参加
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Remarks |
研究所ホームページ業績検索サイト:http://www.igakuken.or.jp/research_search/
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Tau accumulation in the nucleus accumbens in tangle-predominant dementia2014
Author(s)
Kawakami I, Hasegawa M, Arai T, Ikeda K, Oshima K, Niizato K, Aoki N, Omi K, Higashi S, Hosokawa M, Hirayasu Y, Akiyama H
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Journal Title
Acta Neuropathol Commun
Volume: 2
Pages: 40
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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