2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24500430
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
新井 信隆 公益財団法人東京都医学総合研究所, 病院等連携研究センター, 副所長 (10167984)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | てんかん / 鉄 / 脳外科治療 / 焦点病理診断 |
Outline of Annual Research Achievements |
てんかん外科手術を受けた556人の焦点切除部を、アストロサイトへの鉄沈着の有無や病理像の種類にフォーカスを当てて再検証を行った。その結果、血液由来鉄沈着が必発する海綿状血管腫や脳挫傷後遺症のほか、以下の病態においても鉄沈着が認められていることを明らかにした。 内側側頭葉てんかん症例のうち、61.5%に海馬硬化を認めたが、そのうちの 5.3%の海馬に鉄沈着を認め、それらの87.5%に頭部外傷のエピソードがあり、頭部外傷時に軽微な出血を惹起し海馬に鉄沈着が形成されたものと思われた。このことは、頭部外傷に鉄沈着性の海馬硬化を生じる危険性が高いことを意味しており、臨床的に重要な知見と思われる。また、内側側頭葉てんかんの新しい病理型として代表者ら発表した扁桃体肥大型側頭葉てんかんは、鉄暴露性てんかんの範疇ではなかった。内側側頭葉てんかん21.7%に様々な病理型の脳腫瘍を認めたが、鉄関連構造物をみとめた脳腫瘍は、胚芽異形成性神経上皮腫瘍のみであり、それらの46.7%に鉄沈着を認めた。 外側側頭葉てんかんと側頭葉外てんかんのうち、約20%には明らかな病変がないと初期診断されていたが、それらの10.6%に、軽微ながら鉄沈着が大脳皮質表層に認められた。このことは、てんかん焦点脳組織のうち約2%には、潜在的鉄暴露があって、てんかん原性獲得に何らか関与していることを示している。鉄暴露型てんかん焦点部をMRIなどの神経画像検査において、臨床現場での検出することにより、手術で治療可能なてんかんの診断精度の向上に繋がることが強く示唆された。一方、これらの疾病構造とてんかん原性を結びつける機能的な背景を示唆する免疫組織学的な所見は得られなかった。 以上の成果の一部は招待講演や、東京都医学研・脳神経病理データベースでも情報発信しており、てんかん病理診断の均霑化に寄与している。
|