2012 Fiscal Year Research-status Report
依存性薬物による脳幹コリン作動性ニューロンでの新規シナプス可塑性とその意義の解明
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24500432
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
金田 勝幸 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (30421366)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 薬物依存 / コカイン / シナプス可塑性 / 脳幹 / コリン作動性ニューロン / ドパミン |
Research Abstract |
麻薬や覚醒剤による薬物依存の形成には、様々な脳部位における可塑的変化が重要であると考えられている。本研究では、これまで注目されてこなかった脳幹の背外側被蓋核(LDT)に着目し、依存性薬物の一つであるコカインの摂取による可塑的変化の誘導の有無、および、その機能的意義を電気生理学的および行動薬理学的手法を駆使して明らかにすることを目的としている。 本年度はコカインを投与したラットから作成したLDTを含む脳スライス標本にホールセル記録法を適用することにより、LDTコリン作動性ニューロンにおいて興奮性シナプス伝達が可塑的に増強していることを見出した。すなわち、コカインを5日間投与し、その1日後においてプレシナプスに起因する可塑的変化が観察されることが分かった。一方で、このような変化はコカインを1日投与したのみ、あるいは、5日間コカインを投与し、その後5日間の退薬を行った場合には認められなかった。以上の結果は、コカインの慢性投与によりLDTコリン作動性ニューロンにおいて一過性の興奮性入力の可塑的増大が誘導されることを示している。 この可塑的変化の誘導メカニズムを調べる目的で、NMDA受容体アンタゴニストおよび一酸化窒素合成酵素(NOS)阻害剤の作用を調べたところ、コカイン慢性投与による可塑的変化が抑制されることが分かった。したがって、LDTコリン作動性ニューロンでの可塑的変化の誘導にはNMDA受容体の活性化とNOの産生が関わっていることが示唆された。 以上の結果は、脳幹のLDTコリン作動性ニューロンの活動がコカイン摂取により増強される可能性を示す初めての知見である。LDTでの可塑的な興奮性増強が、その投射先である腹側被蓋野ドパミンニューロンの活性化を介して、コカインによる依存形成に関与している可能性が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的を達成するために記載したH24年度の研究計画をおおむね遂行することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に記載したH25年度以降の研究計画に沿って、LDTで誘導される可塑的変化が、どこからの神経入力に由来するのかを明らかにし、さらに、この可塑的変化の機能的意義を行動薬理学的手法を用いて明らかにすることを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
B-Aの差額である667円は平成24年度3月に既に納品された物品費に充てられる。
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