2013 Fiscal Year Research-status Report
虚血性神経疾患に伴うミクログリア機能亢進と神経細胞死~pH感知性受容体の役割
Project/Area Number |
24500435
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
佐藤 幸市 群馬大学, 生体調節研究所, 准教授 (00302498)
|
Keywords | プロトン感知性受容体 / G蛋白共役型受容体 / 脳虚血 / ミクログリア / 脳内炎症 / 酸性ストレス / 細胞死 / 炎症性サイトカイン |
Research Abstract |
中枢神経系のpH変化は神経機能に重篤な影響を及ぼすと考えられるが、そのメカニズムは依然不明である。本研究では、中枢での酸性ストレスに対するプロトン感知性(pH 7.6~6.0)G蛋白共役型受容体の役割を探索する。また、プロトン感知性受容体が脳虚血や梗塞と関連したミクログリアの活性化に関与しているのか、神経の細胞死や神経機能にどのような影響を与えるのか明らかにするため、プロトン感知性受容体欠損マウスから調整した細胞を用いて検討している。平成25年度では、前年度で未解決の前脳虚血モデルを用いた解析を継続した。さらに、脳虚血や梗塞と関連したミクログリアの活性制御にプロトン感知性受容体であるTDAG8が関与するのか調べるため、細胞外pH低下に伴うミクログリアの炎症性サイトカイン産生制御を解析した。 (1)両側総頚動脈の狭窄を施したマウス大脳の炎症性サイトカイン(TNF-α, IL-1β)の発現を解析したところ、野生型マウスに比べTDAG8欠損マウスにおける発現が高い傾向であった。このように、TDAG8は中枢神経系の炎症性サイトカイン産生制御において抑制的に関与していると考えられる。 (2)LPS存在下でミクログリアを弱酸性処理すると細胞外へのIL-1β産生抑制が観察される。この応答の一部はTDAG8欠損で回復した。また、細胞外pH低下には、細胞内cAMPの蓄積が伴っており、TDAG8遺伝子の欠損したミクログリアの場合、細胞外pHによる細胞内cAMPの蓄積はほぼ消失していた。PKAやMAPKに対する特異的阻害剤を用いた実験から、細胞外酸性pHによる抑制作用の一部にTDAG8/アデニル酸シクラーゼ/cAMP/プロテインキナーゼA系を介するMAPK活性制御機構の関与が示唆された。このように、弱酸性pHは中枢神経系で抗炎症性の保護作用として機能しているかもしれない。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24、25年度では、酸性ストレスに対するプロトン感知性受容体の役割を個体レベルでの解析を中心に探索しきた。前脳虚血手術を施した後、RT-qPCRで前脳組織におけるミクログリアの活性化を解析したところ、炎症性サイトカイン(TNF-α, IL-1β)の発現が野生型マウスに比べTDAG8(プロトン感知性受容体)欠損マウスにおける発現が高い傾向であった。また、平成25年度では、LPS存在下でミクログリアを弱酸性処理するとTDAG8を介した細胞外へのIL-1β産生抑制が観察される。この細胞外酸性pHによる抑制作用の一部には、TDAG8/アデニル酸シクラーゼ/cAMP/プロテインキナーゼA系を介するMAPK活性制御機構の関与が示唆された。このように、中枢神経系ではTDAG8を介した抗炎症性の保護作用が機能しているかもしれない。しかし、酸性ストレスがプロトン感知性受容体を介して神経細胞に及ぼす影響の解析まで至らなかった。今後、このような未解決の項目に関して継続して行う。
|
Strategy for Future Research Activity |
神経細胞の生体膜上で微妙なpHの調節が行われることが示唆されており、細胞外pH低下による神経細胞の機能制御機構が予想される。そこで、プロトン感知性受容体が、脳虚血や梗塞と関連した神経細胞の制御に関与しているのか、これら分子の欠損マウスから調整した神経細胞を用いて、神経細胞に及ぼす酸性ストレスの直接的な影響とその細胞内シグナル機構を解析する。また、神経細胞の機能発現として細胞内Ca2+動員や神経型一酸化窒素合成酵素の活性化が観察されるが、これら応答にプロトン感知性受容体が関わるか神経腫細胞株を用いて解析する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度では、酸性ストレスに対するプロトン感知性受容体の役割を個体レベルで解析した。また、細胞外酸性pHによるミクログリアの炎症性サイトカイン産生抑制作用の解析を行った。これらから、中枢神経系ではプロトン感知性受容体を介した抗炎症性の保護作用が機能しているのではないかという結果を得た。しかし、酸性ストレスがプロトン感知性受容体を介して神経細胞に及ぼす影響の解析まで至らなかった。この未解決の項目を次年度に行う予定であるので、次年度使用額が生じた。 神経細胞の生体膜上で微妙なpHの調節が行われることが示唆されており、細胞外pH低下による神経細胞の機能制御機構が予想される。そこで、プロトン感知性受容体が、脳虚血や梗塞と関連した神経細胞の制御に関与しているのか、これら分子の欠損マウスから調整した神経細胞を用いて、神経細胞に及ぼす酸性ストレスの直接的な影響とその細胞内シグナル機構を解析する(前年度未解決の項目を含む)。また、神経細胞の機能発現として細胞内Ca2+動員や神経型一酸化窒素合成酵素の活性化が観察されるが、これら応答にプロトン感知性受容体が関わるか神経腫細胞株を用いて解析する。
|
Research Products
(6 results)