2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24500437
|
Research Institution | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
Principal Investigator |
長尾 元史 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 運動機能系障害研究部, 研究室長 (00359671)
|
Keywords | 神経幹細胞 / アストロサイト / クロマチン |
Research Abstract |
哺乳類の中枢神経系において、アストロサイトはニューロン、オリゴデンドロサイトと同様に神経幹細胞から生み出される。近年の研究により、アストロサイトの発生は成長因子やサイトカインなどの外因性因子とエピジェネテック修飾などの細胞内在性プログラムの両方により制御されることが示唆されているが、アストロサイト分化の分子メカニズムについては未だ不明な点も多い。本研究では、脳の発生過程において、クロマチン制御因子であるHMGNファミリータンパク質が、アストロサイト分化を促進することを報告する。HMGNファミリータンパク質は、発生後期の神経幹細胞、グリア前駆細胞、アストロサイトで発現していることを見出していたが、さらに、詳細な発現パターンの解析を行った。するとHMGNファミリータンパク質は、アストロサイト系譜の細胞だけでなく、ニューロン、オリゴデンドロサイト系譜の細胞にも発現していることが明らかとなった。しかし、アストロサイト系譜の細胞と違い、ニューロン、オリゴデンドロサイト系譜の細胞では、成熟するにつれてHMGNファミリータンパク質の発現が低くなることが明らかとなった。このことから、神経幹細胞の各系譜への分化において、HMGNファミリータンパク質の発現量が重要であることが示唆された。すなわち、アストロサイト分化において、HMGNファミリータンパク質の発現量は高く維持される必要があると考えられる。マウス神経系前駆細胞で、HMGN1、2、3を過剰発現させたところ、アストロサイト分化は促進され、逆に、ノックダウンすると、アストロサイト分化が抑制された。これらの結果は上記の仮説を支持するものと考えられる。以上より、HMGNは、アストロサイト分化促進において重要な役割を果たすクロマチン制御因子であることが示唆された。この成果により、アストロサイトの分化制御メカニズムの理解がさらに進んだと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アストロサイトの分化を制御する分子メカニズムは不明な点が多いが、本年度の研究で、クロマチン制御因子であるHMGNファミリータンパク質が、新規のアストロサイト分化促進因子であり、その制御にHMGNファミリータンパク質の発現量が重要であることを見出すことができた。実験は、おおむね計画通り進行しており、ここまでの内容で、論文投稿をすることができた。現在、リバイス中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究で、HMGNファミリータンパク質がアストロサイト分化を促進することは明らかとなったが、どのように分化促進するのか詳細な分子メカニズムは未だ明らかではない。今後、その点を中心に解析を進め、さらに理解を深める必要がある。HMGNファミリータンパク質はクロマチン制御タンパク質なので、アストロサイト分化に必要な遺伝子群のクロマチン状態をactiveにしていることが考えられ、今後それを検討する予定である。さらに、HMGNファミリータンパク質以外にもアストロサイト分化を制御する新規分子を見出しており、その分子についての解析を開始する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定より試薬購入が少なかったため。 実験に必要な試薬購入に費用をあてる予定である。
|