2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24500440
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yasuda Women's University |
Principal Investigator |
近藤 慎一 安田女子大学, 薬学部, 准教授 (20404395)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
小胞体において構造異常を起こしたタンパク質、いわゆるミスフォールディッドタンパク質が過剰に蓄積した状態を、小胞体ストレスとよぶ。この小胞体ストレスからの防御機構として、小胞体ストレス応答と呼ばれる応答機構が細胞には存在する。 小胞体ストレスセンサーPERKのノックアウトマウスは、膵臓β細胞で細胞死が見られること、骨芽細胞において骨基質であるコラーゲンI型の分泌が低下していることが報告されていたが、神経細胞に関する報告はなかった。一方、ヒトPERK遺伝子は、Wolcott-Rallison syndrome (WRS)の原因遺伝子であることが報告されており、骨端形成異常、成長遅延、肝臓・腎臓不全、精神遅滞を呈する。3週齢のPERKノックアウトマウスの神経細胞を詳細に検討したところ、脳の委縮、特に嗅球において顕著に委縮していることが明らかとなった。細胞分裂の機構等に異常がないか、解剖学的および細胞組織学的に検討を行っている。さらに、小胞体ストレスマーカー遺伝子の発現の違いを、免疫組織化学またはin situ hybridization法を用いて検討している。また、小胞体ストレスセンサーPERKの欠損マウスは、3週齢の時点で動きが緩慢になっており、これらは細胞増殖の異常によるのか、もしくはドーパミンといったモノアミン系の分泌異常によるものか、またはその他別の要因があるのか、検討を行っている。神経細胞の分化や脳高次機能に対して、小胞体ストレス応答不全マウスを使ったin vivoレベルの解析はほとんど報告がなく、神経疾患の発症メカニズムの解明に向けて、ブレークスルーになりうる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者が、平成24年9月に所属を移動したことにより、達成度はやや遅れ気味となっている。しかし、新所属においても研究設備は整っており、問題ないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
主に以下の2点について、研究を遂行する。 (1)細胞分裂の亢進時期の同定: 分裂マーカーとして分裂中期の細胞を特異的に認識するリン酸化ヒストン3(phosphorylated histone 3, Phospho―H3)抗体による脳の免疫組織化学を行い、PERKノックアウトマウスの大脳皮質における細胞分裂の時期を変化を詳細に検討する。また、胎生期マウスにBrdUを投与し、その時期に分裂した細胞が、最終的にどの層に移動するのかを明らかにする。 (2)細胞分裂が亢進している細胞の小胞体ストレス状態の検討: 培養細胞を培養している培地に小胞体ストレスを誘導する薬剤を負荷すると、G1 arrest により、細胞分裂が停止することが知られていた。このシグナルがin vivoの神経細胞においても同様に働いているとすれば、PERK欠損マウスの神経前駆細胞においては、小胞体ストレスが発生しているのも関わらず、このシグナルカスケードが働かないため、G2 arrestにはならず、細胞増殖機構が変化していると考えられる。in vivoにおいて本当にこの仮説が正しいか、p53/47、14-3-3σ分子の発現などを免疫組織化学またはin situ hybridization法を用いて検討する。また小胞体ストレスが、どのようなレベルの小胞体ストレスなのか、ストレス関連遺伝子の発現を詳細に検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究経費の使途・目的を以下に記載する。 ①消耗品:実験の性質上、試薬および培養器具を大量に使用するので、研究経費の大半を消耗品の購入に充てる。 ②動物維持・管理費:PERKノックアウトマウスの維持、交配用実験動物の購入に使用する。 ③旅費:国内の学会および研究会に参加し、研究成果を発表するとともに研究を遂行する上で必要な情報の入手を図るため、各年度とも東京(1回)、大阪(1回)への出張を計画している。 なお、備品の購入や人件費等には充てない。
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